5927 夜灯祭(よとぼしまつり) 『獄寺くん!今日暇?』 突然の十代目からの電話に、携帯をしっかり耳に当て俺は何度も頷いた。 いや、今は電話中だ、頷くだけじゃ伝わらない… 『暇ッス十代目!めちゃくちゃ暇ッス!』 熱くなる携帯をギュッと握りしめ、降って湧いた幸せを噛み締める。 『じゃあ今日の夕方くらいに迎えに行くから、家に居てね!』 『え?俺お迎えに上がりますよ!』 『ううん、いいの!待ってて。』 ね、と釘をさされたら、ハイと頷くしかなかった。 フフッと耳元に柔らかな笑い声が届いて、くすぐったくて胸が熱くなる。 もっと聞いていたいけれど、十代目には準備があるらしく、無情にもじゃあね、と残しプツリと切れた。 「十代目の用事って何だ?あ、まさか宿題?」 一人ぐちゃぐちゃと悩んで見るものの残念ながら、ネガティブな思考しか出ては来なかった。 熱くなった耳元にそっと手を当てて、十代目の声の残響に目を閉じる。 『獄寺くん……』 ヤバい… いかがわしい妄想しか出ない自分にため息を吐いた。 胸ポケットから煙草を取り出すと一本くわえ火をつけるも、なかなか十代目は消えてくれなかった。 何本目かの煙草の煙りが上空に向かって立ち上る。 それを目で追って、着替えるべくシャツのボタンを外した。 [次へ#] [戻る] |