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Please Give Me Your Kiss3



「男は獄寺見本演技!女子は笹川見本見せてみろ!」

教師の声に獄寺くんは一瞬ああっ?ってキレそうになったけど、俺と目が合うと、仕方なさそうにプールへと吸い込まれていった。クロールで50メートルを泳ぎ切る獄寺くんから目が離せなかった。

その時わっと周りから声があがって、そちらを見ると、京子ちゃんがプールの真ん中で溺れている。俺は泳げない事をこれほど悔やんだ事はなかった。

だって…足を攣らせて溺れた彼女を一緒にプールに入っていた獄寺くんが颯爽と抱えてプールサイドへと押し上げる。

「山本っ手貸せ!」

叫んだ君の声に山本が手をかして意識のない京子ちゃんを寝かせると…鼻を摘んで上向かせた京子ちゃんの唇に獄寺くんの唇が重なった…何度かそれを繰り返すと、京子ちゃんは水を吐く。そして咳こみながらも意識を取り戻した。

周りから今度は感嘆の声があがり、親友の黒川が彼女の背中をたたき喜んでいる。山本と獄寺くんは、そんな二人を見ていて、教師は獄寺くんを褒め讃え京子ちゃんを念のため保健室に連れていった。

俺はさっきの唇が重なる場面をスローモーションのように再生していた。獄寺くんにかけよる皆を余所に俺は、自分の唇に指を当てた。ほとんど無意識に。

群がるクラスメートを散れっと恫喝して獄寺くんが、こっちを見た。途端に驚いた表情をしてこちらに駆け寄ってくる。

なに、なんで?

「十代目!」

すぐ側まできて急に俺の手首を掴んで、顔を覗きこんで…

「どこか痛いんですか!どうしたんですか?」なんて聞く。

「え?」

指で目尻を掬われて、初めて俺は自分が泣いている事に気づいた。捕まれている手首が熱い。見つめ返した俺の目からはボロボロと涙が零れて、心臓がドキドキして、顔が真っ赤になって行くのがわかる。

「じゅ…」

「ゴメン離して…」

顔を精一杯背けて、腕を振りほどきプールから走り出る。もう一刻だって、そこにいたくなかった。それなのに獄寺くんは、いとも簡単に俺を掴まえた。振りほどこうとして体勢を崩した俺の体をしっかりと君の腕が支えて、それにさえ体の温度が上がると言うのに…



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