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輝く君の行方は…(16)
クチバシティ。
ペルシアン工業社前。
リカ、ミヅキ、デンジがいた。
「木曜日。絶対にリュウのウロコ団体のヤツが来るはず…!」
ミヅキが畳んであるダンボールを持ちながら言った。
リカはダンボールを指さしながら言う。
「ねえ、何でダンボール持ってんの?いらないじゃん」
「だよな。邪魔なだけだよな」
デンジも疑問のようだ。
「二人とも何を言ってんだ」
ミヅキが二人を『貴様の頭は飾り物か?』とでも言いたそうな、バカにした目で見る。
「これに入るからに決まってるだろ」
「「はあ?」」
リカとデンジの頭に、『ダンボールやドラム缶に入って敵地に潜入するオッサン』がよぎった。
「…それって、ス●ークなんじゃ「口にキムチ詰めるぞ」…ごめんなさい」
「…世界最速のハリネズミと共にスマブラXに参戦したあの「今ここでエロ本の事叫ぶぞ」…もう何も言わん」
リカとデンジはつっこめなかった。
「じゃあリーダーとデンジはダンボールかぶろうな」
ミヅキが二人にダンボールを差し出す。
「「断る」」
二人はミヅキにダンボールを押し返した。
「…………………」
「…………………」
「…………………」
三人の睨み合い。
「何で俺とリカだけなんだ。おかしいだろ」
「そうだよ。まずはみーがダンボールかぶればいいんだよ」
「何言ってんだ。二人に隠しカメラと盗聴器もってもらう。みーはパソコン担当だ。ダンボールなんかかぶってられっか」
「…………………」
「…………………」
「…………………」
言うだけ言ってまた睨み合い。
ふぅ…と、三人は息を吐いて集中力を高める。
そして……
「「「最初はグー!!ジャンケンポン!!」」」
「くそっ!」
「みーのばかぁぁ!」
デンジとリカが、ペルシアン工業社の入り口の横でダンボールをかぶっている。
ミヅキも色々考えたのだろう。デンジのダンボールはリカと違い大きいサイズだ。
ちなみにミヅキは近くのファミレスでドリンクバーを頼み、ノートパソコンを開いて隠しカメラの映像を見ている。
店内は冷房がきいているし、ドリンクバーで飲み物が飲み放題。1人だけ快適だ。
「(あ〜、あちい)」
そしてデンジとリカは汗をかいている。こっちは最悪だ。
ダンボールの中はまるでサウナ。
『おーい』
デンジの通信機にミヅキの気の抜けた呼びかけ。
デンジは外に声が漏れないように小声で返す。
「何だクソミヅキ」
暑さのせいでイライラしているようだ。
『クソとか言うな』
「俺がダンボールをかぶるはめにならなければ言わなくて済むんだんだがな」
『ああ…で、用件なんだが』
「無視か」
『社内に潜入してくれ』
「あ゛?」
デンジはやはりイライラしていた。
『まあ聞け。リーダーが潜入するって言い出したんだよ』
「……リカに繋げろ」
ピッ
通信がミヅキからリカに切り替わった。
『やっほ〜デンジ。潜入しようと思った理由なんだけど。ここ暑いじゃん?中なら涼しいかなって思ってさ☆』
「………………」
無言の圧力をかけるデンジ。かなりイラっときている。
『はは、冗談だよ。ホントの理由は、目当てのヤツが来ても、会社内に入られたらうちらは怪しまれるからなかなか動けない。だったら初めかららコッソリ入っとこう!ってこと』
「……なるほどな」
『でしょでしょ?じゃ、潜入決定だね!人がいないのを確認したら、裏口まで行こう!じゃね〜』
ピッ
通信機が切り替わり、相手がミヅキになる。
『どうだった?』
「潜入だ」
『そっか。じゃ、盗聴器落とすなよ。高いんだから』
「お前は俺より機械の心配かよ…」
『当たり前だろ。いくらしたと思ってんだ』
「…………そうかよ」
デンジは少しだけ悲しかった。機械以下だし。
『じゃ、またな』
ピッ
通信機が切れた。
「さてと…」
デンジはダンボールの穴から周りを見渡す。
ペルシアン工業社内潜入作戦の始動だ。
人の目を上手く避けながら裏口まで来たリカとデンジ。
リカがダンボールを取り、ドアノブをガチャッと回す。
「お、開いてる。不用心だなぁ」
「開いてなかったらどうするつもりだったんだ…?」
デンジはリカの頭が心配になってきた。
中に誰もいないかをを確認し、音を立てないように中に入りそっと扉を閉める。
「よ〜し。誰もいないね」
またダンボールをかぶり、壁にそって少しずつ進んでいく。
目指すは正面の入り口の壁だ。
☆ ☆ ☆
一方、ファミレスのミヅキ。
「うん。順調そうだな」
リカが持っているカメラで、ノートパソコンに映像を送ってもらっている。
「(後はリュウのウロコ団体の映像を取って盗聴できれば…。ふへへ)」
ミヅキは怪しくにやけた。
「ま、まずは無事に中に潜入できたから一安心だな。よし、カルピスカルピス〜」
パソコンを閉じて席を立ち、ドリンクバーのカルピス注ぎに行った。
☆ ☆ ☆
ゴソゴソと進むリカとデンジ。
前を進むリカが急に止まる。
会社の従業員なのだろう。人が歩いて来たのだ。
「(おっと…)」
リカにぶつかりそうになったが、デンジも止まった。
なんとかただのダンボールとしてやり過ごさなければならない。
息を殺してじっとする。
「「(……………)」」
「〜〜〜♪」
従業員はのんきに鼻歌なんて歌っている。この二つのダンボールが不法侵入者とは知らずに。
「「(……………)」」
「〜〜〜♪」
従業員は二人の入ったダンボールの横を素通りしていった。
「「(……ふぅ…)」」
二人はまたゴソゴソと進んだ。
そしてまた向こうから人が来たので二人は止まった。
「ん…?こんな所にダンボールなんてあったかな…?」
通行人は二人のダンボールを見て不審に思い、手を伸ばした。
「「(やめろぉぉぉぉ!!)」」
ダンボールを取られたら不法侵入者として警察に突き出されるだろう。情報収集ができなくなってしまう。
すると、
「おーい。こっち手伝ってくれ!」
「おお。今行く〜」
通行人は誰かに呼ばれ、ダンボールを触らずに去っていった。
「「(よかった…)」」
つくづく運がいいやつらだ…。
そして何とか表の入口付近に来ることが出来たダンボール二つ…もといリカとデンジ。
リュウのウロコ団体(相変わらず名前ダサい)が来たらすぐわかる場所だ。
ここでダンボールとしてやり過ごし、盗撮と盗聴をしなければいけない。犯罪だが。
「(早く来い。もし誘拐の組織だったらぶっ潰す)」
ダンボールをかぶっているとはいえ、きちんと緊張感を持っているデンジ。
「(うう…お腹すいたぁ)」
でもリカは緊張感が足りなかった。
つづく
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この三人はいつもいつも緊張感が無いような…?
マキ&ユウリは危険な目にあってんのにww
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