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輝く君の行方は…(12)
ラジオ塔の展望台に行くには、三階の別の階段を上った先のエレベーターに乗らなくてはならない。
「面倒な作りだよな…」
「だよね〜。うちも思う」
「設計者はきっとミヅキみたいなひねくれ者だな」
「…ぶっ飛ばすぞデンジ」
三人とも好き勝手文句を言いながらエレベーターに乗った。
エレベーターは上へと上っていく。
☆ ☆ ☆
ヤマブキシティ。
「それでは、ごきげんよう」
「はい。では、また今度」
だいたい8時半。遅くなったけれど、一緒に買い物をした友達のエリカさんと別れ、リニア乗り場に向かう。
やっぱり私は白が好きなので、新しく買った帽子はやっぱり白。嬉しくて早速被ってみた。
明日はアサギジムでもかぶっていようかな?とつい考えてしまいます。
白い帽子に白いワンピース。好きな色の服を着ると、やはり気分がいいものです。
エリカさんに『白い帽子は危ない噂がありますから、止めた方がよろしいのでは ?』と言われたけれど、何もあるわけないですよね。噂は噂、ということでしょうか?
ガッ、グイッ
…え?
「ちょ…!何ですか!?裏路地になんか…うっ…。」
口に布を当てられた。その瞬間、意識が遠のく。
「……つ、次こそは…次こそはアイツのトレーナーであってくれ!じゃないと……じゃないと…」
目の前に霞んで見えたのは、酷く怯えた顔でブツブツ何かを言ってる男。
私の意識はそこで途切れた。
まさかジムリーダーの私が噂の被害者になるとは、夢にも思っていませんでした。
☆ ☆ ☆
扉が開き、三人はエレベーターから降りた。展望台はドーナツ型でエレベーターはその穴にあたる。
三人はエレベーターの反対側に回った。
「あ」
リカが止まった。二人も足を止める。
そこにはウェーブのかかった長い茶髪で、肌の黒い女の子の後ろ姿。年は十七歳ぐらいだろうか。
彼女はショートパンツにキャミソールと少し露出の高い格好。アクセもジャラジャラ付けている。そして望遠鏡でどこかを見ている。
「あいつ…なのか?」
デンジが呟いた。
「多分ね」
リカがそう言ってツカツカとその子に歩み寄った。
足音に気がついたのか、その子は望遠鏡から顔を離し、リカを見た。
「あ、ようやく来たんだぁ。で、あんたは警察?……違うかぁ、まだ子供だし」
リカが少女に言う。
「さっきうちと会話したの、あんた?」
少女は頷く。
「…あんたがボスなの?」
あまり見せない険しい表情のリカ。探偵モードだ。
デンジとミヅキは黙ってその様子を見ている。
「そう。アタシが正真正銘ボス」
ふふんっと腕を組む少女。
「だけどぉ…ぶっちゃけ、やる気無いんだよねぇ。悪の組織」
少女はため息をついた。
「「は?」」
驚いてぽかんとするミヅキとデンジ。
「……うん、だろうね」
リカは落ち着いている。
「わかってたの?」
「何となく。さっきだって、脅しも何も無しでわざわざ怪電波のスイッチを教えた。自分の居場所を教えておきながら、ここに組織の人が他に一人もいない。…護衛をつけないなんておかしいじゃん?腕っぷしに相当自身があるなら別だけど」
「な〜るほどぉ。で、アタシをどうすんのぉ?まあ、当然警察行きだろうけど」
あははっと少女は笑う。
「実はさぁ〜、SPEARはアタシのオヤジ…父親が去年死んだからついだんだけどぉ。もーはじめっからヤルキ無かったっつうかぁ。一部の部下はアタシがボスになるの反対してたしさ〜」
父親から組織を継いだ…リカの言っていた"二代目"は当たっていた。
「ただ、父親はいい人だったの。何で悪の組織やってたのか今でもぜんっぜん分かんない!」
少女はため息をつく。
「……なーんかアタシには合わなかったんだよねぇ。こういう事すんの。今回、初めから捕まるつもりだったんだ〜」
「(初めから、捕まるつもりだった…?)」
ミヅキは少し驚いた。
「アタシさ、警察に自首しようかとも考えたんだけど、部下にカッコつかないじゃん?だから誰かに見つかったて事にしようと思ってね」
少女はへへっと笑った。それはどこにでもいるようないたずらっ子のような表情。
「アタシが全部話せば、部下も全員捕まるわよね?マジざまぁってカンジ?」
ミヅキはデンジに言う。
「なんか、フツーの子みたいだな。根っからの悪い子でもなさそうな…」
「そうだな…それに、警察もようやく来た」
デンジは呆れ気味に外を見下ろしながら返した。
「一体今まで何をやってたんだか。本当、重要な時に無能なやつらだよな」
「みーも同感だ。法に縛られすぎてて身動きがとれなくなってんじゃねーの?」
下にはパトカーがたくさん止まっている。そして展望台に止まっていたエレベーターは、警察を乗せるために動き出していた。
つづく
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