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赤の名を持つ彼を探して(1)

カントー地方で名を馳せた悪の組織・ロケット団が、ある少年によって解散させられた。

あれから二年…いや、もうすぐ三年がたとうとしている。

ここはジョウト地方コガネシティ。

Wish探偵団事務所。

六人の少女達が、今日も仕事の依頼が来るのを待っていた。











ガチャ

赤く短い髪の人物が、事務所の扉を開いて外に出た。

「……ほら、おいで」

外にいたブラッキーを呼びに来たのだ。

ブラッキーは嬉しそうにすり寄ってきた。

その人物の名はサツキ。このブラッキーのトレーナーであり、Wish探偵団のメンバーだ。
彼女は身長が高く胸がない。そしてクールな性格のため、男の子に間違われやすい。

「……ほら…」

サツキはゆっくりとブラッキーを抱き上げた。

そして事務所の中に戻ろうとすると、上空から声が響いた。



「さっちゃ〜ん!!」



探偵団内で使われているサツキのあだ名だ。

見上げてみると、メタグロスに乗った黒髪の少女だった。

ぼそりとサツキはつぶやいた。

「……ゆーなちゃん」

黒髪の少女の名はユウナ。メタグロスのトレーナーであり、探偵団のメンバーだ。
ポケモンバトルの腕もなかなかだが、格闘家としての技術が高く、並の人では歯が立たない。
しかし普段はおしゃれをしたり彼氏とデートをしたりと、普通の女の子だ。

ばっ

しゅた

ユウナはメタグロスから飛び降り、サツキの前に着地した。

「メタグロス、お疲れさま!」

パシュウン

そしてメタグロスをモンスターボールに戻した。

「はぁ〜あ。わざわざヤマブキにまで行ってきたけど、やっぱり格闘道場は休みになちゃったわ」

ユウナは探偵団に入る前、ヤマブキの格闘道場の門下生だった。

今回は道場の師範が『しばらく山に修行に行く!』と言うので、現門下生と共に止めるためにヤマブキに行ってきたのだった。
無駄だったが。

「……修行、か」

「そ。仕方がないから、師範がいない間は道場をジムリーダー達の練習場として開放することになったわ。…師範には内緒でね」

ユウナはくすっと笑う。

つられてサツキも少し笑った。

「……ちゃっかりしてるね」

「あはは。あたしは”みー”ほどじゃないけどね」

みー…探偵団のメンバーの一人だ。
運動はかなり苦手だが、パソコンと機械類の扱いに長けている。情報収集などを担当している。

「じゃ、中に入りましょ」

ガチャ

ユウナはそう言って事務所の扉を開いた。

「ただいまー」

大きな声でただいまを言ったユウナに続き、サツキも中に入った。

サツキは抱いていたブラッキーを床に下ろした。

たたた…

ブラッキーは走っていき、階段をのぼっていった。サツキの部屋に向かったのだろう。

事務所内は広々としていて、スッキリとした印象をうけるデザインになっている。

白い壁にはひまわりとキマワリが描かれた絵画が飾られていて、中央には四角いガラステーブルが置いてある。
テーブルの左右には四人掛けのソファが置いてあり、奥にも一人掛けのソファ。
部屋の隅には観葉植物が置いてあり、窓には真っ白なレースのカーテン。
…壁の端の方にひっかき傷があるが。

ちなみに一階が事務所になっていて、二階と三階が生活スペースとなっている。

テーブルに三人分のコーヒーを用意していた、メイド服でツインテールの少女が二人を見た。

「あ、お帰りなさいですぅ」

そう言われ、ユウナがこたえた。

「ゆうちゃん、ただいま〜」

メイド服の少女はユウリ。
探偵団のメンバーで、以前はメイドの仕事をしていた。
そのせいか、探偵団でも掃除をしたりコーヒーを淹れたりと何となくメイドがやりそうな仕事をしている。

「そろそろ帰ってくる頃だと思って、ゆーなちゃんの分のコーヒーも用意したですぅよ。どうぞですぅ」

「ありがとう」

「さ、さっちゃんも」

「……ありがと」

ユウナとサツキはソファに並んで座った。ユウリは二人の向かいのソファに座った。

サツキはブラックのまま飲み、ユウナとユウリは角砂糖二つとミルクを加えて飲んだ。

すると、ユウナは言った。

「…そういえばリーダーは?」

リーダーとは、その通り探偵団のリーダーだ。

ユウリがユウナに答える。

「リーダーはさっきおやつにいかり饅頭を食べて、そのまま自分の部屋でお昼寝してるですぅ」

「おやつの後お昼寝って…まるで園児じゃない。あたし達と同じ年だったわよね?」

一応、探偵団のメンバーはみんな14歳だ。

「……リーダーだから、仕方ない」

サツキがそう言うと、ユウナも納得した。

「確かにリーダーだものね」

そしてコーヒーを一口飲んだ。

「じゃあ、まきちゃんとみーは?」

まきちゃんも探偵団のメンバー。
ポケモンの体力回復や状態異常解除に関する知識を多く持っていて、セラピストでもあるのだ。
ちなみに紅茶を淹れるのが上手だ。

「二人ともお夕飯の材料の買い出しですぅ。たぶんあと三十分くらいで帰ってくると思うですぅ」

「そっか〜。今日の晩ご飯は何かしらね?」

「……たぶん、ロールキャベツ」

「ひき肉と野菜が特売だったのね」

そんなことを言いながらコーヒーを飲む。

「ところで、今日は依頼あった?」

「あったらリーダーは寝てないですぅ」

「そうよね〜!」

ユウリの答えに笑うユウナ。

「……そろそろ依頼がないと赤字…。みーが貯金が無くなるって、頭かかえてた」

「そ、そうよね…」

サツキの一言に暗くなるユウナ。

「きっとジムリーダーやポケモンリーグの人たちはいっぱい稼いでるですぅ。うらやましいですぅ」

このユウリの言葉で、ユウナもサツキも明るくなった。

「いいわねぇ、『四天王』。憧れるわ〜!」

「……チャンピオンの『ドラゴン使いのワタル』…一度バトルしてみたい」

サツキはいまいちわからないが、ユウリとユウナの目がキラキラしている。

カントー地方とジョウト地方の間にあるポケモンリーグ。

そこにいる四天王とチャンピオンに勝ち殿堂入りすることは多くのポケモントレーナーの憧れなのだ。
彼女たちにとっても例外ではない。



ピンポーン



事務所のチャイムが鳴った。

「はーいですぅ」

パタパタとユウリが扉まで行く。

「あたし、久々にチャイム聞いたわ…」

「……どっかの宗教勧誘…かな?」

ユウナとサツキがこう思ってしまうくらい、今月は依頼が無かったのだ。

ガチャ

「はい、どちらさまですぅか?」

ユウリがドアを開くと、同じ年くらいの少年がいた。

茶色くツンツン立った髪に、緑色の瞳。
『そらをとぶ』でここまで来たのだろう、隣にはピジョットがいる。
ちなみにイケメン好きのユウナが喜びそうなくらいイケメンだ。

少年は言った。



「人探しの依頼、頼めるか?」



つづく

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