本棚 輝く君の行方は…(14) ヤマブキジム。 「はぁ…」 ジムリーダーのナツメは深いため息をついた。 最近続出している行方不明事件。自分がジムをやっている町で起こっているのだ。悩まない訳がない。 「まったく。警察は何をやっているのかしら!」 警察から協力の要請もまだ来ていない。自ら動きたいが、ジムをそう簡単に空ける訳にはいかないのである。 ……トキワシティのジムリーダーは、しょっちゅうジムを空けているが…。 「(それに…、今日も何か起きる…!)」 ナツメはエスパーポケモン使いなだけでなく、彼女自身も超能力者である。 未来に、何か不吉な影を見たようだ。 ☆ ☆ ☆ ヤマブキシティ。 午前8時・ホテル。 部屋で白いキャミソールにピンクのスカートを履き、白い帽子をかぶったユウナがくるりと回った。 「どうかな!大丈夫?」 「……うん。可愛い。似合ってるよ」 サツキが笑ってみせる。 「本当!?なら、早速外にでて作戦開始ね!!」 「……うん」 二人は外に出て『囮作戦(囮も自分達、捕まえるのも自分達)』を開始した。 内容は、ユウナが白い帽子をかぶり、誘拐犯が来た所でサツキが犯人捕獲を行う…という単純なものだ。 「よーし!犯人め、どっからでもかかってきなさい!!」 拳に力を込めるユウナ。雰囲気がガラッと変わり、素人でもユウナの強さが伝わってくる。 「……ゆーなちゃん、武道家の気、出さないで。周りの人が怖がってる」 「は!いけないいけない…」 サツキに言われてユウナは力を抜く。すると元の雰囲気に戻った。 「(強そうってなったら、犯人があたしに近づかないかもしれないもんね。気をつけないと…)」 ヤマブキシティに来てから、ユウナは少々落ち着きがない。自分が育った町で事件が起きているからだろう。 「……じゃあ、僕は少し離れて歩くね」 「オッケー。頼むわね!」 ユウナを一人でいるように見せかけるために、サツキは少し後ろを歩く事にした。 「…………………」 サツキは作戦が成功するか少々不安になっていた。 なぜかというと、誘拐は数日おきに起きているため、今日犯人がいるかどうかわからないからだ。 「(……犯人、か…。来るかな…?)」 サツキは空を見上げてみた。 空には、平和そうなきれいな青が広がっていた。 つづく [*前へ][次へ#] [戻る] |