本棚 ピッピにんぎょうの話〜コトネとハヤト〜(ハヤ→アン) 「またのご利用をお待ちしてます!」 ジョーイさんの女神のごとき笑顔を見た後、わたしはシロガネ山の麓のポケモンセンターを後にした。 「あーあ〜。今日も負けてしまった…」 まさか"あの"ピカチュウの次に待ちかまえていたポケモンがカビゴンだったとは……。 攻撃しても攻撃しても倒れない上に、『ふぶき』を放ってくるなんて…。…あられ状態だから命中率高いし。 手持ちは勿論全滅だ。ピカチュウに三体、カビゴンに三体倒された。 「マリルも機嫌なおしてよ〜!」 隣を歩く(一番最初にやられた)マリルにそう声をかける。 「…リル!」 ぷいっ そっぽを向かれた。 「タマムシデパートに着いたら、ミックスオレを買ってあげるからさ!ね?」 「リル!?リル〜!」 ぴょんっ 目をキラキラさせながら、嬉しそうに頭に飛び乗ってきた。 …前から思ってたけど、わたしのマリルって単純だなぁ…。 タマムシデパート。 「え〜…と、すごいきずぐすりもハイパーボールも買ったし、後は…」 後は屋上に行ってマリルにミックスオレを買うだけかな。 あ!後でガンテツさんのとこにヘビーボールを取りに行かないと。 ちょんちょん 頭の上のマリルが、頭をつついてきた。 「どうしたのマリル?」 「リルッ」 マリルの指差す方を見ると、そこにはわたしの知ってる人がいた。 「…あれ?ハヤトさんだ…。何してるんだろう?」 じっと同じ商品を見つめてる…。あれは…ピッピにんぎょう? ハヤトさんとピッピにんぎょうって、意外な組み合わせだなぁ。ピッピにんぎょうって、女の子に人気の商品だし。 そういえば、前にもタマムシデパートでハヤトさんを見た。その時はアンズさんと『どちらの父が素晴らしいか』について口論してたけど…。 今日はピッピにんぎょうを買いに来たみたい。 「ハヤトさんこんにちは〜!」 びくっっ …なぜかとてもびっくりされた…。 「そんなに驚かなくても…」 「な、なんだ…。コトネか」 わたしの顔を見てほっとするハヤトさん。わたしを何だと思ったのだろうか? 「デパートにいるって事は…買い物か。もう終わったのかい?」 「はい。ハヤトさんは、ピッピにんぎょうを買うんですか?」 「ま、まあね」 「へぇ〜。"オトメン"ってやつですね!」 「いや、自分用に買う訳じゃ…」 「え?」 「あっ…!!いや、それは……」 妙に焦って弁解しようとするハヤトさん。これは… 自分用じゃない=プレゼント用 ピッピにんぎょう=女の子に人気 って事は…… …恋愛関連に決まってる!!! 「誰にプレゼントするんですか!?やっぱりアカネちゃんとかミカンちゃんですか!?まさか…イブキさん!??いや、四天王のカリンさんとか!?」 「や、やっぱりこうなるっ…言うんじゃなかった!!」 わたしがぐいっと詰め寄ると、ハヤトさんは真っ赤な顔を隠しながらあとずさる。 「教えて下さいよ〜っっ!」 「やめてくれ…っ。恥ずかしい。」 むむぅ。言ってくれそうもないなぁ…。 じゃ、奥の手を使おう。 「…マダツボミの塔の柱に『ゴーリキー』と『ハヤト』って相合い傘が書いてあったと、アカネちゃんにメールしますよ?」 「やめてくれ!!アカネにそんなメールしたら、嘘だってわからずに言いふらしまくって、三日で町中に広まってしまう!!」 「じゃ、教えて下さい」 「くっ…」 うわ。心の底から嫌そうな顔してる! 「…はぁ」 諦めたようにため息をつくと、観念したハヤトさんは言った。 「アンズにだよ…。こういうのが好きかどうかわからなくて、買おうかどうか迷ってたんだ」 「おぉ!アンズさんだったんですか!」 「誰にも言わないでくれよ?」 「わかってますよ!勿論です!」 数日後。 キキョウシティ・キキョウジム。 ピピピピ… ハヤトのポケギアに電話がかかってきた。相手は…アカネ。 ハヤトは電話に出た。 「もしもし、どうした?」 『コトネから聞いたで〜。あんた、ピッピにんぎょうを買ったんやってな!誰に渡すのか知らんけど、すみにおけんな〜!』 「……………」 コトネのヤツ言いふらしやがった!! [*前へ][次へ#] [戻る] |