本棚
赤の名を持つ彼を探して(13)
「わ…ワタルのカイリューを…?」
リカが目を丸くしてワタルに問い返す。
「そう、君たちがシロガネ山を登れるという実力を示してほしい。勿論グリーン君抜きでだ。…別に手持ち全てを倒せだなんて言わない。カイリュー一体だ」
ワタルはそう言うが、カイリューはワタルのエースポケモンだ。倒すのは容易ではない。
「でも…一人でチャンピオンのポケモンを倒せるはずないです!」
バトルが苦手なマキがそう言うと、ワタルは言った。
「いや、二人がかりで構わない」
「二対一って事?」
リカがそう聞くと、ワタルは頷いた。
「二対一なら、あたし達でも何とかなるかもしれないわね!」
「……そうだね」
やる気を出したユウナとサツキ。
ミキはリカに言う。
「チャンピオンはみー達のバトルのコンビネーションを試すってワケだ。どんな組み合わせにする?」
「ん〜……カイリューはドラゴンタイプ。有利になるのはドラゴンタイプとこおりタイプだけど…」
リカは腕を組んで考える。
「そして、バトルの腕とポケモンの強さを考えると、さっちゃんとゆーなちゃん…」
「そもそもみー達、こおりタイプもドラゴンタイプも持ってなくね?」
「そうなんだよねぇ〜…タイプ相性では攻めれないんだよ」
ミキの指摘通り、探偵団はこおり・ドラゴン、どちらのタイプのポケモンも持っていない。(ユウリは後々クマシュンを手に入れるが、それは時系列的にまた別の話だ)
「俺は抜きかよ。つまんねぇな」
グリーンは少し不機嫌気味だ。
「君の強さは十分知ってるからね。今更試すまでもないだろう?」
殿堂入りした(というかチャンピオンだった)グリーンは、当然ワタルを倒している。
「…まあ、そうだけど」
ワタルの言葉に、グリーンは反論も何もしない。が、どこか納得できないようだ。
「…あの子達に仲間外れにされて、寂しいのかい?」
くすっと笑うワタル。
リカ達は六人全員で組み合わせと作戦を話し合っている。勿論ワタルに聞こえないようにヒソヒソと。
「ばっか!ちげーよ!」
グリーンは声を荒げて否定する。
「チャンピオンとバトルしたかっただけだ!!ジムに来る挑戦者はみんなつまんねーから!」
「そうかそうか」
ワタルには、照れ隠しにしか見えなかった。
二人がそんな会話をしていると、リカ達の話し合いは終わった。
「ワタル!バトルしよう!この二人と戦ってもらうよ!!」
リカが自信満々に笑う。
「ワタルの相手をするのは、ゆぅちゃんとみー!!」
「不安ですぅけど、頑張るですぅ〜!」
ユウリは拳を握り気合いを入れる。口癖の『ですぅ』のせいでイマイチ締まらないが。
「いっちょやるか…!」
ミキはにやぁ…と、悪いことを考えているような笑みを浮かべている。
「………………」
グリーンはサツキを使わない事を心の底から不思議に思った。
闘技場に移動した探偵団とワタルとグリーン。
ワタル、ミキ、ユウリ以外はフィールドの外の観客席に座る。
「君たちの使用ポケモンは一人三体まで…計六体までだ。そして入れ替えあり。いいね?」
「OK!」
ワタルの説明を聞き、ミキはにししっと笑う。
「それじゃあ始めよう!」
ワタルはカイリューのボールを投げた。
ボンッ
ボールが開き、カイリューが飛び出す。
「行くですぅ!」
「それっ!」
ユウリとミヅキもボールを投げた。
ボンボンッ
ユウリのボールからはトゲキッス、ミヅキのボールからはジバコイルが出てきた。
「カイリュー、『りゅうのいかり』!!」
ゴアァァッ
カイリューの口から炎のようなものが勢いよく放出される。
「ジバコイル、『ソニックブーム』!!」
「トゲキッス、『はどうだん』ですぅ!!」
ジバコイルは空を切り裂く鋭い刃のような攻撃、トゲキッスは体中を巡る波動を球状の攻撃にし、『りゅうのいかり』に向けて打ち出す。
二つの攻撃は『りゅうのいかり』の軌道を変え、『りゅうのいかり』は壁に当たり消滅した。
…二体の攻撃を合わせても軌道を変える事しかできないくらい、カイリューの攻撃は強かった。
ミキはそのまま次の指示を出す。
「ジバコイル、カイリューの後ろに回れ!じっとしてると攻撃の的だ!!止まるな!!」
「カイリュー、もう一度『りゅうのいかり』!!狙うのはジバコイルだ!!」
カイリューの攻撃がジバコイルに迫る。
「ジバコイル、『ミラーコート』!!そのまま移動しつづけろ!!」
ジバコイルが両脇のユニットからエネルギーを板状に出し、『りゅうのいかり』を反射させる。
カイリューは反射された攻撃を食らった。
「くっ…当たらないか」
ワタルは一瞬悔しそうな顔をする。
「トゲキッスに向けて『はかいこうせん』だ!!」
カイリューの口から高密度のエネルギーが一直線に放たれる。その先にはトゲキッス。
「『かげぶんしん』ですぅ!!」
トゲキッスの姿が数体増える。本物は一体のみ。
ズガァァッッ
『はかいこうせん』はトゲキッス幻影…偽物に当たり、その先の壁に当たって穴を開けた。
カイリューは『はかいこうせん』の反動で一瞬すきができた。
「『はどうだん』ですぅ!!」
バシュンッッ
トゲキッスの攻撃は命中したが、ダメージはたかがしれている。
ユウリはそのままトゲキッスに命令を出す。
「『かげぶんしん』!そして『バトンタッチ』ですぅ!!」
つづく
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!