本棚
赤の名を持つ彼を探して(9)
トキワシティジム。
「……行け!!」
ボンッ
サツキが二匹目に選んだのはエルレイド。
「へえ…。珍しいの持ってるんだな」
シュウがエルレイドをまじまじと見る。サツキは何も言わない。
エルレイドは戦闘態勢をとり、サツキの命令を待った。
「……エルレイド、『めいそう』」
エルレイドは目を閉じ、とくこうととくぼうを上げ始めた。
「させるかよ!『にどげり』!!」
ニドキングが足を上げ、エルレイドに蹴りをいれようとした。
その時!
「……今だ!!『サイコカッター』!!」
バシュンッッ
……ズズゥンッ
ニドキングに『サイコカッター』が直撃。
片足で立っていたニドキングは、バランスを崩し倒れる。
『めいそう』はニドキングの攻撃を誘う囮。初めから『めいそう』を決めるつもりはなかった。
シュウの性格なら絶対攻撃してくるだろうという、サツキの作戦だったのだ。
「くっ。ニドキング!『メガホー…」
「……『サイコキネシス』!」
シュウが技名を言い終わる前に、エルレイドの技が決まる。
『サイコカッター』、『サイコキネシス』。どちらもどくタイプのニドキングには効果抜群。いくら防御力が高くても、ひとたまりもない。
「マジかよ…!」
シュウは信じられない。という顔で戦闘不能となったニドキングを見ている。
「……ニドキングは戦闘不能。次、出したら?」
サツキとエルレイドがシュウを睨みつける。
「やるな…。じゃ、いくぜ!!」
シュウはニドキングをボールに戻し、二つ目のボールを投げた。
ボンッ
「ぐおぉぉぉぉ!!!」
シュウの投げたボールから、ボーマンダが飛び出す。
「……なかなか、強そう」
「強そうじゃなくて、強いんだよ!!」
「……いや、久々に…ちゃんとしたバトルをして、楽しくってね」
サツキは笑った。
サツキの言う『ちゃんとした』とは、競技としてのバトルを指している。探偵団は事件の犯人との『ちゃんとしていない』バトルばかりだからだ。
「ちゃんとした…?よくわかんねぇけど、いくぜ!!」
シュウがボーマンダに命令する。
「『りゅうのいぶき』!!」
ボーマンダの口から青い炎(のようなもの)が放たれる。
サツキは、ぼそぼそっとシュウに聞き取れない声で何かを言った。
それから技を命令。
「……『サイコカッター』!」
ゴオォォ
エルレイドに『りゅうのいぶき』が当たる。『サイコカッター』のスピードが間に合わなかったのだ。
「ボーマンダ、『かみつく』!」
「……エルレイド、『サイコキネシス』」
エルレイドはボーマンダの攻撃をかわし、『サイコキネシス』を放つ。
「こうなったら…『そらをとぶ』だ!!」
「……やっぱりそうきたか…」
ボーマンダが翼を動かして空中に浮き、天井ギリギリを飛び回る。
「どうする?攻撃できんのか?」
シュウがバカにしたように笑う。
「…………………」
サツキが黙る。
「そうか。攻撃できないか!俺の勝ちだな!!」
ボーマンダが急降下し、エルレイドに攻撃をしかけようとする。
「…………決まった…」
サツキが呟いた。
バキィッ
ボーマンダが、『何か』の攻撃を受けた。
ズズゥン…
ボーマンダが倒れる。
ボーマンダ、戦闘不能。
勝者、サツキ。
「……あの攻撃、何だったんだ?」
バトル後、みんなの元に戻ろうとしたらシュウに声をかけられた。
「……何が…?」
「最後の攻撃だ!!何だったんだあれ!!」
平然とサツキは返した。
「……ああ、『みらいよち』だけど?」
「み、『みらいよち』…?」
『りゅうのいぶき』をされたとき、ぼそぼそと命令したのがそれだったのだ。だから、『サイコカッター』を出すのが遅れてしまった。
「……じゃ、あんた、負けたんだから、さっさと帰って」
サツキにそう言われたシュウは、悔しさで一杯になりながらジムを後にした。
サツキによるジム戦、勝利!(ただしジム側)
つづく
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!