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赤の名を持つ彼を探して(7)
トキワシティ。トキワジム。
ジムの奥の部屋で、三人とグリーンは挑戦者が来るのを待っていた。
「挑戦者の方、来ないですぅね」
「……ジムトレーナーに、手こずってるんじゃ、ない…?」
ユウリとサツキは暇そうだ。
「あのさ、別にこっちに来なくたってよかったんだぞ?」
グリーンがあきれ気味に言うと、ユウリが答えた。
「だっておも…、依頼人を守るのも仕事ですぅ。それに家を訪ねるのに六人は多いですぅから」
「…今、面白そうって言いかけなかったか?」
「空耳ですぅ」
「いや、言いかけただろ…」
バターンッ
突然扉が開き、エリートトレーナーのジャケットを着たジムトレーナーの男が来た。
「グリーンさん!我々全員に勝利した人が現れました!」
それを聞いたグリーンは立ち上がった。
「やっと来たか…。わかった、今い「僕が行くよ…」
「…は?」
グリーンの言葉を、サツキが遮った。
「……僕が、代わりに行くよ」
サツキは立ち上がってグリーンを見る。いつも通りの無表情だ。
「……いいよね?」
「……………」
グリーンは少し考えた後……頷いた。
レッド捜索において、もしかしたらポケモンバトルをする可能性もあるだろう。サツキがどれだけの実力があるのか見たかったのだ。
そしてサツキは男に近づき、言った。
「……上着、貸して」
そして無理やり男からエリートトレーナーの証でもあるジャケットを取った。
「え!?何するんですか!!」
驚く男に、サツキはため息をつき、説明する。
「……だから、戦うの。僕はジムトレーナーじゃない。だからあんたの上着、借りたの…」
やらやれ、と言いたげな目をするサツキ。
「え…、と…。」
男は全く状況が読めず、言葉が詰まる。その間にサツキは部屋を出て闘技場に向かった。
「…………………」
エリートトレーナーは、ぽかんとした顔をしていた。
数十秒後、ようやく男はしゃべりだした。
「グリーンさん!誰なんですか!?あの男!!何で行かせちゃったんですか!?」
「あ〜…。あいつは……知り合い」
探偵とは言いにくかったため、考えた末『知り合い』になった。
「何でって………面白そうだから行かせた?」
グリーンの言葉を聞いて男は頭をかかえる。
「面白そうって…。ジム戦を何だと思って……。それに何故疑問型?」
「あ、それにあいつは女だぞ」
グリーンがそう付け足すと、男は顔を上げた。
「…すみません、今何と?」
「何だ急に。…『面白そうだから』って言ったんだが」
グリーンの答えに男は首を振る。
「その後にです!」
「…『あいつは女だぞ』か?」
「女!!?」
サツキが女だったと聞き、ビックリする。
中世的な顔だちをしていて、身長が高いことから、サツキを男だと思ったらしい。
「さっちゃんはかっこい女の子ですよ〜」
ニコニコしながら言うマキ。
「男と女の見分けもできないんですぅ?」
バカにしたようにニヤニヤするユウリ。
「あの人、女だったなんて…」
男はしばらくショックで何もしゃべらなくなった。
「あれ?次でジムリーダーだと思ったんだが…、違ったんだな」
「……僕に勝てたら、次、ジムリーダーだよ」
サツキが闘技場に行くと、金髪の青年がいた。おそらく、サツキ達より少し年上。
ピアスやチェーンを付けた、サツキの嫌いなチャラチャラした格好のヤツだ。
「ま、次も今までみたいにスパッと勝って、ちゃちゃっとバッジを貰うか!」
そう言って青年はモンスターボールを構える。
「……グリーンと僕は、甘くないよ」
サツキの目つきが鋭くなる。
「俺はシュウ!暴走族の頭(ヘッド)だ!」
「……僕は、サツキ…。ジョウト行政直下、タンバ方面保安隊の、元、隊員…!」
そして、二人はモンスターボールを投げた。
ボンッ!!
ボールが開き、ポケモンが出てくる。
「……頼むよ、ブラッキー」
サツキのポケモンはブラッキー。出て早々に、シュウに威嚇している。
「俺が使うのはニドキングだ!」
「ギャオォォオ!!」
シュウのニドキングが、鳴き声を轟かせた。
サツキのブラッキーは、それを聞き低く唸り出す。
「ニドキング、『つのでつく』!」
ニドキングがブラッキーに向かって突っ込んでくる。
「……ブラッキー、『でんこうせっか』でよけて…!」
ニドキングの『つのでつく』が空振りした。
「……そして、『だましうち』…!」
ブラッキーの攻撃がニドキングに命中。
だが…
「きくか!そんな攻撃!!」
ニドキングはブラッキーを掴み、床にたたきつけた。
かなり防御力は高いようだ。
「……!!よけろブラッキー!!」
サツキが大声を出した。
「『アイアンテール』!!」
バキィッ
ニドキングが尻尾を振り、ブラッキーに直撃した。ブラッキーはよけきれなかった。
「……!…もどれブラッキー」
瀕死になる前にサツキがブラッキーをボールに戻す。
「……やっぱり、どく状態…。」
ブラッキーはひんし寸前だった。
……ニドキングの特性は『どくのトゲ』だった。最初に『だましうち』をしたときにどくにかかったのだろう。
さっき『アイアンテール』が避けられなかったのは、どくによって弱っていたからだったのだ。
サツキは自分の読みが甘かったことを反省した。
「もうおしまいか!?それでも男かよ!」
シュウが挑発してくる。それをサツキは冷静に返す。
「……まだ終わらないよ。それと、僕は女だ」
「マジで!?女なのかよ…。まあ、手は抜かないけどな!」
女と聞いて驚くシュウ。しかしさっきのジムトレーナーの男のようにはならなかった。
「……よし。行け…!!」
サツキが、二匹目のボールを投げた。
つづく
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