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赤の名を持つ彼を探して(5)
「それは、あいつに……」
グリーンはそこまで言うと、下を向いて黙ってしまった。
「(聞いちゃいけなかったのかな…?)」
リカがそう思った時、
「あいつに…レッドに負けたからだ」
グリーンはゆっくりと話し始めた。
約三年前のポケモンリーグでは、今までに無いバトルが繰り広げられた。
『いけ!ピジョット!!』
『出てこい、ピカチュウ!』
チャンピオンと挑戦者、どちらもわずか11歳の少年。
風が舞い、鳴き声が轟き、水・草・炎が闘技場を彩った。
激しく、どちらが勝ってもおかしくないバトルに、ポケモン協会の人々は驚いた。
『リザードン、「かえんほうしゃ」!!』
『カビゴン、「ねむる」!!』
一進一退の攻防戦に、時間はどんどん過ぎていく。
そして長時間におよんだバトルに勝利したのは、挑戦者の方だった。
『…………………』
−最強のチャンピオンの誕生−
誰もがそう思ったが、その少年はチャンピオンを辞退。
殿堂入りを済ませた後、行方をくらませた。
「……最後にあいつと会ったのは、あいつが殿堂入りを済ませた直後だ」
「そっかぁ…。リーグじゃそんなことがあったのか…」
リカは顎に指をあて、考え始めた。
「それと、最後に『次は勝つ』って言ったら、『ごめん』って返してきやがった!」
グリーンの脳裏によみがえる当時のやりとり。
『次はお前に絶対勝つからな!』
『………ごめん。…じゃあね』
帽子のつばを下げるレッド。顔は見えなかった。
レッドはグリーンに背を向け、走り去った。
『何だよそれ!俺には無理って言いたいのかよ!?』
レッドは振り返らなかった。
「俺はあいつの…レッドのライバルだ。俺はレッドに勝たないとチャンピオンじゃないと思ってる」
「だからリーグチャンピオンを辞めたんだね」
「ああ」
グリーンが話し終えると、リカが立ち上がった。
「話してくれてありがとう。じゃあ、明日から調査だ。カントーに行くよ!」
それを聞き、ミキは言った。
「リニアも開通したし、カントーまで行くのが楽になったよな〜」
「ははっ、何言ってんのよ!前にシンオウまで行くのに飛行船を貸し切ったじゃない!」
笑ってミキにそう言うユウナ。
「そういやそうだったな!ははは」
「飛行船貸し切るって…お前ら何者?」
グリーンのこの疑問は、ミキの笑いにかき消された。
「ホウエンに行くときには、豪華客船のサントアンヌ号に乗ったよね」
「船上パーティー楽しかったですぅ!」
そう楽しそうに言ったのはマキとユウリ。
「ホントに何者だよお前ら」
「何って…Wish探偵団だよ☆」
グリーンの質問にリカが答えたが、正直答えにはなっていなかった。
そのまま五人は楽しそうにしゃべっている。
グリーンはため息をついた。
「(この探偵事務所に来たの、ハズレだったかもな…)」
「……ハズレとか、失礼な…」
サツキがボソッとグリーンに言った。
「(だってリーダーはガキで頭悪そうだしうるさいし…)って、何だよお前!心の中読めるのかよ!?」
グリーンは驚いてソファから落ちそうになった。
「……いや、読めないけど…。『この事務所ハズレだったかな』って疑ってそうな顔してたから」
「そうかよ」
グリーンはソファに座りなおす。サツキは話を続けた。
「……リーダーは頭悪そうに見えるけど、凄いよ」
「…どんな風にだ?」
「……前に、迷宮入りになりかけた事件、解決した。あと警察が来る前に、殺人事件を解決した」
「本当か?」
「……事実」
ミキも会話に入ってきた。
「リーダーの頭の中の辞書は不良品だから、”不可能”って文字が無いんだと思う。バカだし」
それを聞いてグリーンは笑った。
「バカって…自分達のリーダーじゃねえか」
ミキもにししっと笑う。
「…カントーに行くんだろ?マサラタウンにレッドの母親がいる。行くか?」
「お!そうなのか」
「……話を聞きに行こう」
こうして探偵団はカントー地方マサラタウンに行くことが決定した。
つづく
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