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赤の名を持つ彼を探して(2)

ユウリはその少年を中へ通し、サツキとユウナの向かい側のソファへ座らせると、コーヒーを準備しに行った。

「(か、かっこいい!!)」

…少々彼を見たユウナの落ち着きが無くなった。

「(…なんだ?俺のことじっと見て…)」

少年はユウナを不思議に思った。

ユウリがコーヒーを持ってきた。

「はい、どうぞですぅ」

コーヒーを少年に差し出し、ユウナの隣に座った。

「ああ、ありがとう」

少年はコーヒーに角砂糖を二つ入れた。

そして少年が一口飲んだところで、サツキが言う。

「……さて、依頼の内容はなんですか?トキワの新ジムリーダーのグリーンさん」

少年は目を丸くした。サツキの言葉に少し驚いたのだ。

「知ってたのか。ジョウトの人も」

「……当たり前。雑誌に載ってたから」

依頼者の少年…グリーン。
カントー地方トキワシティの新人ジムリーダーだ。
ポケモン研究の全国的権威であるオーキド博士の孫であり、リーグで殿堂入りもしている。

トキワジムリーダーに就任した時、ポケモントレーナーに人気のバトルに関する雑誌に特集を組まれていたのだ。

「……まずはこちらの自己紹介から。僕はサツキ」

「あたしはユウナです!」

「私はユウリですぅ」

ユウナの目は相変わらずキラキラしている。

「サツキにユウナにユウリか。よろしく」

グリーンは三人の顔を順番に見て、そう言った。

「必要なさそうだが一応名乗っておく。俺はグリーン。依頼があってここに来た」

「依頼って一体何ですか?」

テンションが高いユウナがグリーンに聞いた。

「探してほしいヤツがいるんだ」

「人探しの依頼ですか!」

「あなたのヨメはおそらく三次元にはいないですぅよ?」

「ちげえよ!?ヨメって…何なんだお前!!」

ユウリの発言につっこむグリーン。

「二次ヲタジョークですぅ。ごめんなさいですぅ」

ユウリはくすくすと笑った。実はマンガやアニメが好きなヲタクなのだ。
ちなみにユウリのヨメは画面から出てきてくれない。

「はあ……。で、探してほしいヤツの名前は…『レッド』だ」

そう言ったグリーンはとても真剣な表情だった。

「……『レッド』。…その人って…」

サツキが何か言いかけた時、



ガチャ



突然事務所の扉が開いた。

「ただいま」

「ただいま〜って、なんだなんだ〜?ゆーなちゃんが喜びそうなイケメンが来てるじゃねえか!」

ネギがひょこっと見えている買い物袋を持った長い茶髪の少女と、同じく買い物袋を持った短い銀髪で眼鏡をかけた少女が入ってきた。

茶髪の方がマキで、銀髪の方がミキだ。

「誰だ?あの二人」

二人を見て首をかしげたグリーンにユウナが答えた。

「二人ともあたし達の仲間で、マキとミキです!」

マキがグリーンに近づいた。

「お客さんですね?はじめまして。マキといいます」

マキは丁寧にお辞儀をした。

マキに続き、ミキもあいさつをする。

「依頼者か〜。みーの名前はミキ。じゃ、買い物したやつ台所に持っていくから」

たたたっ

ミキはマキの持っていた買い物袋も持って、さっさと階段を上がっていってしまった。

グリーンはとりあえずマキにだけ自己紹介をする。

「え〜と…俺はカントー地方トキワシティのジムリーダのグリーンだ」

「ジムリーダーさんでしたか。よろしくお願いします」

マキはにこっと笑った。

「あ、ああ。よろしく…」

グリーンもついつられて笑顔になった。
マキの優しい笑顔を見ると、大体の人はなぜかつられて笑顔になってしまうのだ。

マキは事務所内をきょろきょろと見た。

「ところで…リーダーはどこ?お客さんが来てるのにいないね?」

「リーダー…?こいつじゃねーのか?」

グリーンはサツキを見た。

「……僕はリーダーじゃないよ」

サツキは否定し、首を振った。
ユウリも言う。

「さっちゃんはさっちゃんであって、リーダーじゃないですぅ」

「……そういえば、リーダーはお昼寝したまま…」

「…ひ、昼寝?」

グリーンは驚いた。
探偵が…しかもリーダーが昼寝しているなんて。
この探偵事務所は大丈夫なのだろうか。

「そういえばそうでした!ちょっと起こしてくるですぅ」

ユウリがパタパタと小走りで階段を上っていった。



・・・10分後・・・



「はあ、はあ…つ、疲れたですぅ…」

「ふい〜、よく寝た」

息切れしているユウリと、ポケモンのプリンの形をした帽子をかぶった小さい少女が下りてきた。
ユウリに何があったのだろうか…?

その後に、買ってきた食材を台所の冷蔵庫に入れ終えたミキが下りてきた。

「お?どうしたゆうちゃん。そんなに疲れて」

「みー……。リーダーを起こそうとしたら、寝ぼけたリーダーに『うへへへへケーキぃ〜〜!!』って襲われて…」

「…………災難だったな」

ミキはユウリをかわいそうな目で見た。
以前ユウリと同じ目にあったことがあるのだ。

その様子を見ていたグリーンは、この探偵団達は本当に大丈夫なのか不安に思った。

「久しぶりに仕事が来たんだねぇ〜。これでまたケーキ食べに行けるね☆」

少女は嬉しそうに笑った。

グリーンは見るからに年下の少女が、この探偵団事務所のリーダーには見えなかった。

「(ちっちゃいな…9歳くらいか?)」

「?」

グリーンが少女を観察していると、少女に不思議そうな顔で見られた。

「…何?」

「いや、結局ここのリーダーは誰なのかと思ってな」

「え?うちだよ」

「は?」

「うちがWish探偵団のリーダー!”リカ”だよ!」

グリーンの目が大きく開かれた。驚いたのだ。

「まじかよ…こんな年下のチビがリーダーだったとは…!!」

そう言ってグリーンはため息をついた。
どう考えたってリーダーは他のメンバーの方がいいだろうと思ったのだ。

その一言がリカの地雷だったとは知らずに。



「おいトゲトゲウニ頭、今うちのことなんて言いやがった!!?」



やけにドスのきいた声。怒りの感情が読み取れる。
しゃべったのはリカだ。

「うちはれっきとした14歳!!ガキでもチビでもミジンコでもないんだよ!!」

そこまでの悪口は言っていない。

「お、俺と同い年!?」

リカの言葉にグリーンは驚いた。

「ば、バカにして〜!!うちはちっちゃくないもん!!みんながでかいだけだもん!!」

ユウリとユウナが止めに入る。

「相手は悪気はなかったんですぅ。リーダー、落ち着くですぅ」

「やめなさいよリーダー!相手はイケメ…ジムリーダーさんなのよ!」

ユウナの言葉に変な本音が入りこんだ。

「ゆうちゃんもゆーなちゃんも黙ってて!!」

リカは二人が止めるのを聞かずに勝手に話を進める。

「グリーン!お前がジムリーダーなのは知ってるよ!バッジはかけなくていいから、うちとポケモンバトルしろ〜!!」

「はあ!?」

「うちが勝ったら『チビ』って言ったの訂正しろ!!バーカバーカ!!」

ただの悪口も言っている。
グリーンはいきなり勝負を挑まれてびっくりしている。

他のメンバーは呆れ気味だ。

「……………はあ」

サツキは無言でため息をつき、コーヒーを飲んだ。

「ったく、リーダーは実際チビでガキなのに」

そう言ったのはミキ。

「ジムリーダーさん相手にそう簡単には勝てないのに。リーダー大丈夫かな?」

マキは呆れているが、少々心配そうだ。



つづく

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あきゅろす。
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