[携帯モード] [URL送信]

逆転裁判SS
bague de fiancailles
「で?お前はいつ言うわけよ成歩堂」
「ぼぼくの話は良いだろ別に!」
「いや、私も興味あるな」
「ああっ御剣お前ーっ!」
「だろ?だろ?やっぱお前は話がわかるヤツだぜ御剣ぃ!」
「肩を組むな矢張。しかし成歩堂、アレは既に買ったのだろう?」
「あ、あぁ、先週な……ってなんで知ってるんだお前!?」
「なんだよ御剣、アレって?」
「言う時に一緒に渡すアレ、だ。お前が買った店はメイのお気に入りの店らしくてな…先週店に行ったらお前を見たそうだ。あんな店に1人で買いに来てるなんぞ、用はそれしかあるまい」
「うぐぅっ…!いたのか狩魔冥…!」
「あまりに真剣に選んでて、不気味で近寄れなかったそうだ」
「メイちゃんが近寄れなかったなんて、相当不気味だったんだなァお前…」
「全くだな」
「うううるさいな!」

bague de fiancailles


「ただいまー」
玄関のドアをそっと開けて小声で言う。
今は午前1時。久しぶりにいつもの3人で飲んでいたら遅くなってしまった。
(うぅ…飲みすぎたなぁ。…あれ?)
靴を脱いでフラフラと廊下を進むと、居間のドアの隙間から明かりが漏れていた。
消し忘れだろうかと思いながらそっとドアを開けると、真宵ちゃんがソファで眠っているのが見えた。
「あらら…先に寝ててって言ったのに…」
ソファに近づいて顔を覗く。
「真宵ちゃん、起きて。風邪ひいちゃうよー?」
優しく肩を揺するが身じろぎしただけで起きない。
よく見るとパジャマ姿で何も掛けずに眠っているため、ちょっと顔も白く、寒そうだ。とりあえずぼくの着ているコートを脱いでかけてやる。
「真宵ちゃーん?」
「…んぅ……」
うるさそうに眉を寄せてコートの中に顔半分をうずめる。そして息を深く吸ってからふわりと顔が笑ったように緩んだ。
(ぼくの匂いがしたから、とか…?)
なんだか嬉しいようなこそばゆいような、暖かい気持ちになる。
(うぅ、可愛い)
酔いも手伝って、床に座りかなり良い気分で真宵ちゃんの顔をじぃっと見つめていた。
白い頬をそっと撫でる。すべすべしてて、柔らかい。自分のとは全然違う。気持ち良くて何度も撫でてしまう。
「……真宵ちゃん?」
寝てる、よね?
じゃ、ちょっとだけ…いいかな。
「ごほん。ええと…真宵ちゃん。ぼくは…貧乏だし、真宵ちゃんには沢山苦労かけちゃうと思うんだけど…でも」
心臓の鼓動がドクドクとうるさい。
「…真宵ちゃんがいないと…生きていけないんだ……多分。だから、あの」
ごくり、唾を飲む。
「…けっ……結婚してくれませんか…?」
返ってくるのは緩やかな寝息だけ。
(…っぶはぁぁぁっ!緊張する!今の練習なのに!聞いてる訳ないのに緊張するよ!!)
うわあああと心の中で絶叫し続ける。そしてふと我にかえる。
(途中のとこ、変更した方がいいかな…)
「ええと、一緒に生きようとか…添い遂げたい…、みそ汁…」
「………みそ汁…」
びくうっ!!!
体が固まった。冷や汗が背中を伝う。
(きき聞かれた!?)
「……ん…なるほどく…?」
長いまつげが動いて、真宵ちゃんは目を覚ました。
「あっ…いや、あの、今のは…」
「んん…おかえり…」
「っ…うん、ただいま」
いつものようにそっとキスする。唇はコートに隠れてるので柔らかい頬へ。
「ふふ…なるほどくん、お酒くさーい」
「あ、ごめん」
聞かれてない…?
どうやらギリギリセーフだったようだ。
真宵ちゃんはゆっくりソファから起きようとすると、
「くしゅっ!」
「ほら風邪ひいちゃうよ、ベッド行こうね」
「んー…」
背中と膝に腕を通すと真宵ちゃんは素直に体を預けて甘えてきた。
「よいしょ」
「なるほどくん暖かいねぇ。あ、コートありがと」
「いや、こっちこそ帰りが遅くなっちゃってごめん」
腕の中の真宵ちゃんはまだ眠そうに、だけど柔らかくふわりと笑う。
「楽しかった?ヤッパリさん最近会ってないなぁ」
「アイツは相変わらずだよ。また新しい彼女が出来ただとか絶対結婚するんだとか言ってさ…そこから話がぼくにも回ってきちゃって、もう大変だった」
「話って?」
「いや、お前はいつけ」

『いつ結婚するんだ?』

思わずピタリと足が止まる。
ニヤニヤ笑う矢張が煩わしかった事に気をとられ、致命的な単語を言うところだった。
「いつけ?」
「あー…いつ怪我するかわからないから気をつけろってさ」
「怪我?うぅん…脈絡ないのは相変わらずだねぇ、ヤッパリさん」
「そうだね」
ごめん矢張。
だけど、言う時はちゃんと言いたいんだ。
ベッドにゆっくり真宵ちゃんをおろして布団をかけてやる。
「なるほどくんお風呂はいるの?」
「ん?うん」
「そっか、じゃ待ってるね」
「え、いいよ寝てて。もう遅いんだし」
「いいの。待ってたいんだもん」
「…そう?」
無理するなよ?と言いながら風呂場へ向かう。
ドアの向こうで布団にくるまった真宵ちゃんが
「待っててあげるから、さっきの、もう一回聞かせてね?」
とクスクス笑いながらこっそり言っているのを、ぼくは気づかずにいたのであった。


《終》


酔っ払いなるほどくん。
冒頭のアレはもちろん婚約指輪。
なるほどくんは言うシチュエーションにこだわりそうな気がする。でも結局自分の部屋とかで言いそう(笑)
タイトルは仏語で『婚約指輪』。本当はCはセ・セディーユなのですが文字化けするので(>_<)

前へ次へ
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!