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逆転裁判SS
甘い檻
普段は特に意識しないことが多いのに、ふとした瞬間強烈に意識することがある。
真宵ちゃんがとても明るくて元気なこともあるからか、
掴んだ手首がびっくりするくらい細かったり、長いさらさらの髪からいい香りがしたり、ぼくを見つめる目がとても優しかったり、
そうゆう時、ああ女の子なんだなと突然実感する。
こんな風に言うと変かもしれないけど、そう思うんだ。

そして次に必ずこう思う。
“この子を自分の中に閉じこめてしまいたい”と。

甘い檻


「なるほどくんの手って、大きいよねぇ。男の人って感じ」
「…どうしたの突然」
「ううん、なんとなく」
夕飯のカレーを食べて満腹になったぼくらはソファに座ってだらだらとテレビを見ていた。
寒くなってきてから、よく真宵ちゃんがぼくにくっついてきたりじゃれてきたりする事が増えた。…こう書くとまるで猫のようだが。
今日もぼくの膝の上に頭をのせて寝転がってテレビを見ていた真宵ちゃんの頭をなんとなく撫でていたら手をとられてまじまじと見られ、そんな事を言われたのだった。
「あたしの手と全然大きさ違うよねぇ、ホラ」
ね?と手をぼくの手と合わせて下から見上げる真宵ちゃん。合わせた手はちょうど一回り小さい。
「あたしのほうがたくさん食べるのに」
「そりゃ、ぼくは男だから」
「男女差別反対!」
「いやいや」
思わず苦笑する。
「あたしの手は子供っぽいのになぁ」
「そう?細くて華奢で、女の子の手って感じだと思うけど」
合わせた細い指をいじりながら思ったまま言ったら、真宵ちゃんは目をパチクリさせて見上げてきた。
あれ、ぼくなんか変なこと言ったかな。
「……初めて言われたよ、そんなこと」
「そうなんだ?」
「うん」
ちょっと照れてもじもじしてる。
まぁ真宵ちゃんは性格が性格だから、よく子供っぽく見られるのはわかるけど。それを言うと機嫌を損ねそうなのでやめておく。
「あったかいね、なるほどくんの手」
「真宵ちゃんの手はちょっと冷たいな。寒い?」
「んー寒くはないんだけど。この時期になると手足が冷えちゃうんだよね」
「冷え性ってやつか」
「でもこうしてるとあったかいな」
と言ってぼくの手をぎゅっと握る。
「えへへ、ゆたんぽみたーい」
「真宵ちゃん専用のね」
「おっいいねそれ。じゃあ春まで頼むよなるほどくん!」
「はいはい」
もう片方の手で頭を撫でてやると、真宵ちゃんは嬉しそうに目を細めて、ぼくの手を握ったまま目を閉じた。
閉じた睫は長く、頬に影を落としている。ふっくらした頬は白くて少し桃色がかっていて柔らかそうだ。少し開いた小さな唇は血色も良くてぷるぷるしてる。
どこを見ても充分女の子らしいよ、真宵ちゃん。
だけど。
それはぼくだけが知っていればいいこと。他の男は知らなくていい。
「……ぼくだけのもの、だ」
「へ?何か言った?」
「いや…独り言だよ」
「ふぅん?」
そう、ぼくだけが知っていればいい。ぼくだけの宝物だ。
「あたしなるほどくんの手、大好きだな」
「…手、だけ?」
「ふふっ内緒!」
「あ、そう…」
「……離さないでね?」
「え?」
ぼくの手をきゅっと握って、ぽつりとつぶやいた。
「……簡単に離しちゃったら、怒るから!」
「真宵ちゃ……いてっ!」
痛い。人差し指をかぷっと噛まれた。
「…離さないよ、絶対」
「絶対?」
「約束する」
「よーし。じゃ、指切り!」
離せないよ。絶対に。
捕らわれているのは、ぼくの方なんだから。
細い指を結んで“離れないで”とこっそり願った。


《終》

単なるノロケ話。
前回のケンカ話が長かったので、短いのを目指しました。
短いの、短いの、と唱えながらポチポチ打ってても、ちょっと長め…。
うむむむーん!課題は残ります。

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あきゅろす。
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