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青春メモランダム
Y.

慌てて階段へと足を運ぶと


「うっ…ひくっ…。」


すぐ下の階段の踊り場で羽鳥が泣いていた。

「羽鳥…」

俺がそっと名前を呼ぶと大袈裟にびくつく身体。そして、羽鳥は急に走り出した。

「あっ、おい羽鳥!!」

俺の呼びかけにも応えずに羽鳥は階段を勢いよく降りていく。
堪らなくなって俺は

「…―亜姫!!」

初めて名前で呼んだ。
息を呑んで立ち尽くした亜姫にすかさず俺は後ろから亜姫を抱きしめた。

「ごめんっ…」

何度言っても謝りきれない。
…俺はやっぱり最低なヤツだ。

俺は飽き性だ。
だから今回も俺が浮気して終わりだと思ってた。
…でも亜姫は違った。
冷たい俺に偽りの俺に笑ってくれた。もしかしたら俺は亜姫に告白された時から既に亜姫を好きだったのかもしれない。

…俺は亜姫が好きだ。


「ごめん…」

俺、本気の恋なんてしたことなかった。

…不器用でごめん。
…性格最悪でごめん。
…好きになってごめん。

色んなごめんが混ざりあい、俺の中で回る。…怖くて亜姫を更に強く抱きしめた。

すると俺の腕におずおずと亜姫の手が添えられた。

「…新城君は浮気者だって有名だった。」

ぽつりぽつりと話す亜姫に俺は口をつぐんだ。

「それでも新城君のことが好きで…告白OKされた時は本当に嬉しかった。…最初から飽きられるんだろって私は必死に自分に言い聞かせてた。いつかその時は絶対来るって。言い聞かせてたはずなのに……っ、やっぱり辛かったっ…。」

涙声の亜姫をそっと放し、俺と向かい合わせるようにする。
赤くなった亜姫の目尻をそっと撫でてやった。

「俺は最低な奴だ。でも…これだけは言わせてくれ。…―俺は亜姫に出会って変われた。亜姫の笑顔が俺を癒してくれた。俺はいつも偽りばかりな人間で、本気なんて知らない。だけど…亜姫なら…亜姫なら本気になれるんだ。」

真っ直ぐ亜姫を見た。
涙で揺らめく視界に俺が写っていた。


「亜姫が好きだ。」


目を見開く亜姫。
しばらく経ったあと、震える声音で問われた。

「嘘…?」

「嘘じゃない。」

即答する俺に亜姫は一瞬びっくりした表情をしたあとふわっと笑った。
そして…





「新城君を信じる。」











何かが満たされた。
…もしかしたら俺はこの言葉を皆に求めていたのかもしれない。

「ありがとう。」


そう言った俺に再び笑いかけた亜姫の顔を俺は一生忘れることはないだろう。















俺の真っ白な備忘録(メモランダム)


最初の1ページ。











*Fin*

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あきゅろす。
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