04
「気を付けろよ…」
「ありがとー」
胸ぐらを掴まれた輩は顔色悪く静かで、やる気があるのか無いのか分からないがとりあえず投げておいてもらった。
全員意識はあるし大した怪我もしてないのに、座り込んだまま動いていない。
「お前ら何しに来たの」
そう聞いても、口ごもるだけで答えは貰えなかった。…が、直後に不良集団の口からではなく答えの実体が現れた。
黒と赤の派手なパーカーにフードを深く被った人物がひょっこりと物陰から出て来て一瞬警戒するも、そいつの声と言葉に目を瞬いた。
「───うわぁ、やっぱ姫ちゃんって強いんだ」
感心混じりの声に聞き覚えの有りすぎるしゃべり方。思い当たる人物に瀬戸と二人で深い溜め息を吐いた。
「…んだよまたか。懲りねぇな」
警戒心はあっても構えはしないで、瀬戸は呆れながら言う。
が、俺は少し気になる事があって不審人物香川に声をかけた。
「アンタ髪切った?」
「えっ」
確か最後に会った(?)時は結べそうなくらい長くて色ムラがある金だったような気がする。そう言うと、香川はあからさまに狼狽えた。
なんだ、失敗したとか?と首をかしげた時、追い風が強く吹いて髪が顔にかかる。向かい側の香川には向かい風で、被っていたフードが風によってふわりと浮き上がった───
「……え、」
「は?」
「〜〜っ! うわぁあぁッ!」
突如目の前に現れた光景に、ただ言葉が続かず凝視するしかなかった。
香川のあの長い髪も金色も姿を消して、そこにあったのは思いの外キレイな形の頭部だった。
「……ボーズ、にしたんすか」
「ち、ちがう!」
「…前より似合ってンぞ」
思わず半端な敬語になるくらいの衝撃に、瀬戸すら驚きを隠せていないようだ。
香川は慌ててフードを被りなおし、その場にしゃがみこんで「不可抗力だ」と必死に叫んだ。
「どゆこと」
「あの鬼が…!鬼が…!」
何があったのか分からないがたぶん先輩関係だと思って聞いてみると、香川はこの世の終わりのような声で言った。
「あいつオレが気絶してる間に椅子にくくりつけて、目をさましたと同時に…!」
香川の話しによるとやっぱり先輩は鬼畜だったらしい。
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