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 泣きついている女子は俯いてるし、その顔は見えないけど。蒼司の声色を自分の都合の良い方に解釈したのか、頷くだけ。
 他の三人は、顔が真っ青なのにね。倒れない?大丈夫?ってくらい。


 なんでそんな真っ青なのか。
 普段温厚な蒼司の冷たさにビビったのもあるんだろうけど、重要な事がある。


 彼女、彼らは俺らのクラスじゃないし、別クラスか上下級生で、さっきポロっと会長の親衛隊って聞いた。

 会長の親衛隊であって、蒼司のじゃない。会長の情報がある程度回ってきても、蒼司の行動情報までは回らない。

 これは多貴が言ってたことだけど、親衛隊に入ってる人はその対象の情報だけしか耳にしない。親衛隊の対象以外に興味がないってのもあるんだろうけどさ、あまり表立って共有しないらしい。
 崇拝に近いもんね。
 その人しか見えません!みたいに。


 そんで、蒼司の登校時間は分からないし、まず朝から教室にいない。イジメられている机を見ることはないし、使えるくらい掃除すれば、目の前に来ないと分からない。

 花瓶は棚の端にあるから、なんの理由かは分からないし、まず一々それを聞かないのが蒼司なわけで。
 俺が孤立化しているとはいえ、たぶん蒼司のことだから喧嘩じゃない事を知っている。別に空気は悪くないからね。

 そして机をイジメてる奴は、たぶん放課後に実行してるし、放課後教室に蒼司が戻ることはない。鞄ごと居ないし。


 まあ、早い話、タイミング良いのか悪いのか狙ってんのか、蒼司は俺の机がイジメられてることを知らない。
 俺が直接イジメられてるって思ってないせいで、イジメられてるのが机ってところはまあ、仕方ないと思う。


 話を戻して。
 泣きついている女子がなにを思ったのか、イジメのことを蒼司が黙認しているとでも思ってしまったのか、まあ自爆したわけで。
 他の三人が蒼白なのが大袈裟な気がするけども。


「……諒、イジメられてるの?」


 静かに、だけどもずっしりと重量感と圧力感のある声が届く。
 滑らかな動きで女子を引き剥がし、当人はキョトンとしてる。いやこっちがキョトンってしたい。

 教室にいても授業中だし、あんま分かんないよな。
 俺の孤立化理由を考えてるのか、蒼白は眉間にシワを寄せたままだ。




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