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02
 


 初めに遭遇してから雰囲気がだいぶ崩れたけど、大概俺のせいだろうな。
 何故か既に息を切らしている先頭の不良たちに溜め息ひとつ、「まだ終わらないの」と言ったら、堪忍袋の緒が煮込んだ細い干瓢程度の強度しかない為か案の定キレてきた。



「もうやっちまえよ!」
「下手に出てりゃいい気になりやがって!」
「袋叩きならイケるだろ!」



 とかなんとか叫ばれた。
 下手に出てたのかどうかは疑問しかないが、袋叩きならイケるってタイマンは無理だと分かってる辺り潔いというか、何かもう可哀想になってきた。
 隣を見上げればこっちもこっちで呆れたような憐憫(レンビン)そうな顔である。


 先陣で勢いに任せたように向かってきた不良たちに乗って、後に続き喧しい声を出しながら地を蹴っていく残りを確認しながらも、瀬戸に言った。



「…どうするこれ」
「退かす」



 退かすて。
 邪魔なものを退かすって意味で間違えはない。例えば、ソファに座る時に邪魔な場所にあるクッションを退かすのと同じ意味である。多分喧嘩を買うとかそういった他意はない。発言が格好良過ぎやしませんか。


 瀬戸は一歩前へ出て宣言通りというか言葉のまま、向かってくる不良共を手で横に勢いよく退かしていくその背中を見てから、数歩だけ後ろへ下がる。
 そこから動いていない広い背中にくっついてても良いんだけど、折角の散歩デートを邪魔された事に関しては俺も気分を害されたので、鬱憤晴らしに参加しようと思います。
 明るいうちから何やってんだか。


 呆れながらも、数歩下がったのは正解だったようで瀬戸の視界を潜ってこっちに来た数人を目で捉えた。



「姫サマは守ってもらうのが常套じゃねぇのかー?」
「誰が姫様だコラ」



 ニヤニヤしながら俺を捕まえようと手を伸ばす輩の手を払い、ついでにそのまま掴んで捻りながらバランスの悪い足元に気付いて膝を軽く蹴りつけた。
 うまい具合に掴んだままの腕に体重が掛かったのか、汚い声で叫んだ。肩を外すのも良いけど過剰防衛になりそうなので手を放して地面に落とした。


 視界に二人、両側から向かってくるのが見えて構えた瞬間、不意に後ろから服が引っ張られて体制を崩してしまった。



「ぅ、わ…っ」



 やば、と思うも腕を後ろに取られ、目の前に来た二人が嫌な笑みを浮かべているのを見た。



 


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