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04
 

 腕を組んだまま動かない店長らしき人。
 もうめんどくせぇから店長でいいや、多分間違ってない。


「お前、甘党?」
「ッはい!甘いの大好きです!」


 全力で言えば、ニヤリと笑われて。


「丁度試作品があンだよ、食うか?」
「……え、」


 そう言った店長さんの雰囲気が、俺を甘い世界に誘惑してくる。
 てか。


「そんな、お金持ってない…」
「売りモンじゃないから必要ねェ」
「……っほ、んと、ですか」


 やっべぇ、やべぇ。
 まじか、ちょーうれしい。

 どうしよ、マジで。










「───ほら」
「っ、わぁ……これ、マジで良いんですか…!?」
「あァ」



 少しして目の前に現れたのは、赤とピンクのグラデーションが女性受けしそうな、シンプルで可愛らしい丸いケーキで。

 ケーキの上に、苺がスライスされ断面が若干見えるようにずらしてあっても本来の姿を残して、水飴でツヤツヤしてる赤。
 横には煮詰めたっぽい林檎らしきもの。
 ケーキの表面には、鮮やかなグラデーションを醸し出すピンク色のクリーム。
 細く、リボンみたいに形作られたチョコレートの黒っぽい茶色と、ミントの緑。


 これが試作品…?
 売りもんじゃねぇの…?



 ごきゅりと唾液を飲み込んで、色んな角度からケーキ見つめる。
 三人の視線も気にならないくらい見入ってる。


「い、いただきます」
「ハイ、どーぞ」


 店長さんの声を聞いてから、フォークを掴む。


 崩すのが勿体ないくらいの綺麗なケーキにフォークを入れ、ゆっくり掬い上げて。
 断面が、ピンクと赤のスポンジに挟まれたクリームと苺が顔を出して。
 凝ってるなぁ、なんて思いながら口に運ぶ。



「………ぅ」
「…う?」


 零した声に律儀に返してくれたのは小柄な従業員だけで。


 やばい。


「う、んまぁ…」


 これぞ幸せ。

 瀬戸との事なんてどうでもよくなる。


 甘すぎないクリームと、苺の酸味と甘味が広がってよく合う。
 なめらかで、しつこくない味。
 意外とさっぱり食べれる。


 ゆるゆるになった俺の表情を、三人がそれぞれ笑みを浮かべて見ていた事に気付いたのは、食べ終わってからだった。


 


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