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06
 


 今日は風も弱くて屋上は陽当たりが良いから、陽に当たるとぽかぽかする。
 日向になっている場所に座り、右に瀬戸が来たので左に廣田を促すとすんなり座ってくれた。
 少しして幸丸と桜井ちゃんが屋上へ姿を見せて、二人してニヤニヤしてたから首をかしげると、桜井ちゃんが自然と円形が出来上がる位置に座りながら言う。



「廣田君はこっちで預かった!返してほしくば今日のお昼はぼっちでどうぞ!って言ったら先生困惑してたからさっさと戻ってきましたー」
「あの困惑のしかたは流石に笑うっす」



 何でそんな語呂の良い台詞がすらすら出てくるんだと思ったけど、桜井ちゃんって本当、人を驚かせたり困惑させるのが好きというか、わざとなのか素なのか謎である。

 えぇ…、とこっちもこっちで困惑する廣田に桜井ちゃんは微笑みを返した。



「大丈夫、この面子の誰が言いに行っても先生妬かないから。 本っ当滾るたまらん今まで目立たないようにしてたのに気付いたら普通に仲間入り出来てて不安もあったけど凄く凄く嬉しい幸せ」
「え、と…桜井さんってさ、もしかして知ってる?」



 後半の早口は流すことにしたのか、廣田は少しだけ不安そうな顔で小さく言った。
 そういえば桜井ちゃん、二人の間の事知っているような事をよく言うよな。



「不安にならなくて大丈夫だよ、そんな表情も攻めからすれば可愛いんだろうけど、私は個人的にそういうのかなり聡いから気付いただけ。 この間先生に確かめに行って答えが出たから確信になったけど、無駄に聡い人しかいないこのメンバーと、多分霧島君も気づいてるんじゃないかな?興味無さそうだから忘れてそうだけど」
「……え、」



 にこにこしながらお弁当を開けている桜井ちゃんに、硬直した廣田。
 そりゃそうだわな。まさか桜井ちゃんが暴露するとは。俺と瀬戸は廣田から聞いていたから知っているけど、多貴と伊織に関しては二人は直接的な素振りを見せてない。それっぽいことは言ってるけど。
 一番聡いのは幼馴染みカップルですけど。蒼司はまあ、確かに興味無さそう。



「だからね、困ったらいつだってお話を聞くよ。ここにいるみんなそうだよ。迷惑なんて思わない。今まで言えなくて溜め込んでいた分、これからは少しでも吐き出そうよ」



 優しくて柔らかくて、まるで理想の母のような声で桜井ちゃんは廣田に微笑んだ。


 


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あきゅろす。
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