03
最近殆ど教室で姿を見なくなった元恋人は、なんの躊躇いもなく隣に並んで歩く。並んで歩くの懐かしいなーなんて思う。
つうか本当にいつもどこにいんだろ。授業中はたまにいるけど、でも朝から教室にいた記憶がない。おかげでイジメにあっている憐れな机を見られたことはない、と俺は思ってるけど。
こっちを見ないくらいバタバタしててなんか忙しそうだし。
「諒?」
「ん、いや、今探してるとこ」
「また一緒にご飯食べてイイ?」
「別に、いいけど」
ただ気になるのは、俺が孤立するようになってから頻繁に声をかけてくるようになったことだ。
始めこそ、タイミング良すぎて狙ってたんじゃねーかってくらい自意識過剰というか被害妄想みたいになったし、そもそもコイツがイジメの首謀者なのか?とかそりゃあ思うよ。
元恋人で、未だに好きだって言われても人は人。何をするか分からんわけで。
弱ってるところを付け入る隙にして意識を向けさせようとする人間もいるわけだし。
でも、何かが違う気がして。
卑怯な手を使うような人間ではない、と思い込んでんのかもしんねえけど、蒼司は真っ直ぐぶつかってくるタイプだと俺は思ってる。
真っ直ぐ目を見て、心配そうな顔をするこいつが、騙すような事とかしないと信じてるからかもしれない。
俺はなんでひとりでいるのかを言ってない。でも、蒼司も聞いてこない。
噂のことを知ってんのかは知らないが、ただ話し掛けてくるから話す。ただ今は基本的に受け身しかとらないことにしてるだけなんだけど。
「天気いいね」
「…暑いけどな」
「木陰に行こう」
弁当の入った巾着片手に、並んで校舎から少し離れた木の密集地に向かう。
夏が姿を見せてきた季節には、日差しは暑いけど木陰にいれば調度いい感じになる。
え?瀬戸の弁当は多貴に持たせてますとも。最近は家の前に二人がいるから、出てすぐバトンタッチ。
ちなみに空箱はうちの郵便受けにインされてる。ギリギリ視界に入る距離で登下校中だからね。ちょっと楽しかったりする。
弁当をもそもそ食べつつふと向かいを見て、やっぱちょっと変だなと思った。
「なんか疲れてんな」
「まあ、ちょっと、ね」
蒼司はそれだけ言って苦笑しただけだった。
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