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09
 


 時間が近づき生徒も集まって先生が点呼をとり、連なって浜へ出たら真ん中辺りにバーベキューセットやクーラーボックスなんかが置かれていて、さながら確かにキャンプ。


 食材はホテル側が出してくれたらしくて、肉野菜魚が豊富に揃っていた。



「───それではみなさん、よい旅行にしましょう。乾杯!」
「かんぱーい!」



 ラフな格好をした珍しい理事長の挨拶もそこそこに各自渡されたコップで乾杯。
 ジュースやお茶やコーヒーを好き勝手飲めるように立てられたテーブルは、安定感がばっちりだ。


 誰と食べるかは決まりがないから、みんな適当に複数ある鉄板に向かい喋りながら食材を焼き始める。



 俺たちは特に離れることなく、はしっこの方にある鉄板で食べることにした。



「わ、ぷっ!風下っ」
「森ちん絶対臭うな」
「北条わざとっすかそのうちわ!」
「はっはっはっ」
「多貴、あんまり仰がないで」
「ほーい」
「……嫁は強しっスか」
「こういうもんだよ幸丸」
「まあ、確かに嫁は強いっすよね、うん」
「なにぶつぶつ言ってんの」


 風下から逃れた幸丸はふと遠くに視線を向けた時、一瞬顔が笑ったように見えた。


「あ、ちょっと飲み物おかわりしてくるっス」


 そう言うなり、走りにくい砂浜で走りにくいビーサンで軽快に走っていった幸丸を見送った。
 すげー脚力だな幸丸。


「なんか嬉しそうだったね」
「そう?」


 伊織が暖かい目をしながら言うもんだから、やっぱりさっきの笑った顔は気のせいじゃなかったのかと思った。


「瀬戸、野菜も食えよー」
「あ?」


 肉ばかり食いやがって。
 腹いせ(?)に焼いてある野菜を次々紙皿に盛ってやった。

 なのに瀬戸が黙って食ってることに満足と不満があるのはなぜだ。
 いつの間にかご機嫌が斜めじゃなくなってるし。


「多貴、魚も食べなよ」
「あーんしてくれたら食べるー」
「はい、あーん」
「オレはいま複雑です伊織さん」


 ここでも夫婦の会話は相変わらずでした。




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あきゅろす。
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