03
高速を走るバス内は色んな声が混ざってざわざわどやどやしてる。
そんな事は気にも止めてないのか、隣の瀬戸は腕組んで寝てるようだ。若干体がこっちにズレて来てるのは揺れのせいかな。
「えー、みなさん、もうすぐサービスエリアに着きますので、十五分の休憩ということで御手洗いなど済ませてくださいね」
バスガイドの林さんの言葉を聞きながら、持ってきていたポッキーを食べる。
「サービスエリア、なんか店あるかなー」
「比較的小さい所だから、あっても軽食とかじゃないかな」
前の席の伊織は窓際なため、隙間から声を掛けたらそう返ってきた。
軽食か。甘味はないのか。
少し気持ちが萎えたところでバスはサービスエリアへと入っていく。色々な車が駐車場に詰まっているそこには、伊織の言った通り小さいサービスエリアで、店はあるものの確かに軽食だ。限定的甘いものはなさそうに見える。
「瀬戸ー、トイレ休憩だって」
「……ん…」
バスが停車して生徒が次々降りていくなか、瀬戸の肩を軽く叩くとやけに色っぽい声が漏れたのを聞いた。
なにこのイケメン。
「十五分後出発しますのでお忘れなくー」
出入口で林さんが声をかけているのを耳にしつつ、瀬戸の様子を伺う。
ゆっくり目を開いた瀬戸は、やはりゆっくり周りを見渡してから欠伸をひとつ。
「……きもちわる」
「え、なにお前バス酔いしたのかよ」
なんとも瀬戸は乗り物に酔いやすかった。バイク乗ってるくせに。
乗ってすぐ寝たのはそのせいか、と納得してから少し可笑しくなって笑ってしまった。
かわいい所があるんだな、とか思った。
「外出て空気吸えよ、少しは変わるだろ」
「……あー…」
「大丈夫、瀬戸くん?」
「瀬戸ちん、なにそのギャップ」
多貴はケラケラ笑ってるものの一応心配してはいるから、軽く背中を叩いたりしてる。
実際のところ気持ち悪い時って、擦られるより軽く叩いてくれた方が楽だったりするんだよね。俺だけかな。
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