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修学旅行には付き物がある。‐01
 

 6月某日、快晴。
 日差しが暑くなってきたなあ、なんて思いながら迎えた修学旅行当日です。




 

 校舎の裏門前には二階建ての大型バスが一台停まっていて、初めて見るその存在感にバスの話題で周りが盛り上がる中。

 ほとんどがキャリーバッグに数名がボストンバッグの生徒が裏門の玄関前に集い、先生が点呼を取ろうと名簿とにらめっこしてる。


 修学旅行へ行く二年の生徒はAからCまで約90名。同伴は二年の担任が三名に保健医一名と副校長に、なせか理事長がいらっしゃるのだけど。

 理由は単純だ。


「えー、諸君。毎年楽しみにしている修学旅行、みなさん良いお休みにしましょう!」
「…理事長、休みはあなただけですよ」


 六十代とは思えない若さと元気さを持った理事長に静かに突っ込んだ、まるで秘書のような副校長。
 毎年行き先が変わる修学旅行には同行していて、忙しい日々からの現実逃避をしているんだとか。


「松本先生、ちゃんと声だして点呼してくださいよ」
「ハイハイ」


 C組の設楽先生に言われて、欠伸しながら点呼とか先生としてどうなんだ、まっつん。

 つい苦笑いを浮かべていると、デカイボストンバッグを肩に掛けた幸丸が駆け寄ってきた。
 因みに伊織も多貴も瀬戸も近くにおります。
 つうか見た目より力持ちだな幸丸。重くないんか。


「おはよっす、バスの座席表持ってねーっすかー?」
「おはよー幸丸」
「おはよう。座席表あるよ、森くん」
「おはー」
「……はよ」


 そういえば、座席が決まった日幸丸いなかったな。
 座席表を受け取った幸丸はお礼を言って席を確認すると。


「これって自由席っすか?」
「うん、そうだよ?」


 伊織は答えたが、幸丸は座席表とにらめっこしながらポツリと呟いた。


「………運命だな」
「は?」
「あ、いやぁ、こっちの話っス」


 へらっと笑ったのはいつもの幸丸だったけど、呟いた時の言葉遣いというかニュアンスが少し違ったように思えたのは気のせいなのか。


「よーし、バス乗れー」


 まっつんの声が聞こえて顔を向ければ、既に生徒たちがバスに乗り込んでた。


 


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あきゅろす。
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