[携帯モード] [URL送信]
02
 

 だがしかし、またしても横から然り気無く言葉の爆弾は投下された。


「そりゃー諒ちんが作ってんだもん」
「…え!?」
「たーきーくーん」
「いーじゃん別に、いつかバレるぞ」
「そういう問題じゃねぇ」


 わざとか。わざとか…?
 多貴さん面白がってますよね、この間の蒼司のことといい、確実に色々と分かってて言ってるよね。


「……」
「ってお前は何も言わないんかい!」
「必要ねえ」


 真顔な瀬戸はさらっといい放ち、弁当を平らげてから俺が行っていた短期間の小言の成果なのか手を合わせて一言。


「ごちそうさん。旨かった」
「……まるで気にしてないなお前」


 ダメだこりゃ、とため息ひとつ幸丸に顔を向ける。


「こいつの食生活が気になったから作ってるだけデス」
「なんで語尾カタコトなんすか? …世話焼きなんすね、仁科って」


 幸丸は純粋なんだな。
 人当たりの良い幸丸に、瀬戸も警戒心とか威嚇とかもなくすんなり仲良くなってきてると思う。
 修学旅行が楽しくなりそうな気がして、なんだかドキドキというかワクワクというか、遠足前の小学生かって感じ。
 そんなんも悪くないよな。




「席つけガキどもー」
「じゃあまっつんはオッサンな」
「よーし北条いい度胸だ」
「さーせん」


 昼休みを終えてダルそうに教室に入ってきた担任、まっつん。そんなまっつんをイジるのがもはや当たり前になっている多貴。
 伊織はもう溜め息すら吐かなくなったよ。


「修学旅行がすぐそこだから、当日の詳しい説明とかプリント配ったりとか色々すっから」
「アバウトすぎ」
「あのな北条、教師も楽じゃねーのよ」
「でもそれが仕事だよね」
「色々あんだよ」
「お疲れさまっス」
「森……、あとで職員室来い」
「え!?なんでっすか!?」
「説教じゃねーよ」
「先生、すんません、オレ部活なんで」
「…結構冷たいな」
「先生ー早くしてくださーい」
「はいはい」




 俺達はまだ、先々の楽しみと今の楽しさで予感すらしなかった。

 既に回転し始め急速に変わっていく何かと、変化する自分の気持ち、その自覚症状のカケラすらも。


 


[*][#]

9/43ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!