お弁当の中身。‐01
そんな曖昧な修学旅行先に疑問しながら数日。
「うわ、幸丸のお母さん弁当うまそう」
「つーか仁科って自分で作ってんすよね、なんでそんな上手いんすか」
修学旅行の班面子で昼御飯を食べるようになりました。ちょっとした親交も含め。
で、今日はあいにく雨なので屋上じゃなく教室で食べることに。
とりあえず幸丸の言葉に少し考えた。なんで上手いと言われるのかとか。
そして行き着いた最短な説明は。
「親が親なもんで」
「えぇ!なんスかその言い方。もしかして仁科ん家の親って結構ズボラ?」
「ズボラ?…んー、なんか違うな」
「…はあ?」
ズボラではないな。なんかこう、うん、なんかね。説明しづらいなあ…。
どう言うか悩んでいた時に、伊織がにっこり笑顔で言いました。
「森くん、諒のご両親はいい人だよ」
「ちょ、伊織さん、フォローがおかしい」
「事実だな」
「多貴まで…」
「……なんか、すげーっす」
関心してんのか引いてんのか、幸丸は何故か数回頷いた。
まあ、そんな幸丸だが、珍しいもんを見ているような視線がクラスの中に限らず廊下からもチラホラ寄越されているのを気付いてはいる。
今まで屋上だったし今日のこの面子じゃ初の教室で昼御飯、それはそれは食べづらそうだった。
誰かと一緒にいるのが珍しい瀬戸の存在は慣れてきているみたいだけど、そこに加わった幸丸。
急に関わりが広がった気がして、ちょっと楽しかったりする。
「そういえば、瀬戸の弁当の中身、仁科と変わらないっすね」
「……」
今更突っ込んできやがったよ、しかも教室で。屋上じゃ円形っぽく座ってたが一応反対側だったし見えなかったのか。
幸丸に突っ込まれた俺と瀬戸は二人して無言。
だって今更言われるとは思わなかったんだもん!
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