03
そんで伊織と、唖然としてる森くんを見れば。
「え、と……伊織?」
「というわけで決まりね」
「え、ちょ、オレっすか!?」
どうやらその場しのぎだと思っていたらしく、携帯を机の上に落とした森くん。
「うん、ごめんね。でもクラスで一番安全牌だったから」
「あ、あんぜん…?」
「大丈夫、放置したりしないよ。よろしくね、後ろの席の森くん」
「なんすかその、どっかの漫画のタイトルみたいな…」
確かに安全牌ってなんだ、何に対してだ。
そんな中、今まで黙っていた多貴がいきなり挙手。
「伊織が言うなら大丈夫だな!よろしく森くん!」
元気だなオイ。
「まあ、いっか。よろしく。下の名前なんだっけ」
すぐ近くなのに気づかないとかどんだけ興味ないんだ俺。
「…幸春っす」
「さちまる?」
「さ、ち、は、る! 仁科、わざとっすか」
「いーじゃん、幸丸!」
「オイ!」
うん、幸丸。
黒の短髪で、サッカー部らしく爽やかなサッカー男子だ。ノリもいい。
とりあえず伊織が決めたなら大丈夫だろう。蒼司のことといい、任せてばっかの自分の無力さが泣けるけど。
笑って話してたら、後ろから若干重ーい空気がして思わず苦笑いしたら、幸丸が笑いながら「顔こわ!」とか言った。
怖れない辺り、爽やかさあなどれん。
「うは、なんか面白くなりそーっすね。改めてよろしくっす!」
「よろしく森くん」
「よろー」
「幸丸面白いな」
「さちはる!」
「……」
「瀬戸ー、よろしくくらいしろよー」
「よろしくっす、瀬戸君!」
「……君いらねぇ。よろしく」
よし、と笑えば、なぜか人をガン見してきやがる瀬戸。なんだよ。
妙に素直だなと思っただけだ。
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