02
ちょっと控えめな感じで言ってきた蒼司に、どうしようか、と伊織に視線を向けると、伊織が口を開いた。
その表情はもう、とても、なんつーか、うん。
「ごめんね霧島くん、もう決まっちゃったんだ」
「……そうなの?」
「へぃ?」
いやこっちに聞かれましても。
決まってないっすよ、思いきり悩んでたよ今。
そんなあからさまに申し訳なさそうに言ってますけど伊織さん。
「多貴と、諒と瀬戸くんと、僕。それから後ろの森くん」
なんでもなさそうに、当たり前のように、伊織は自分の後ろの席を指差しました。
「………ハイ?」
指された森くんは、下げていた顔を上げて唖然としてる。そりゃそうだ、俺でもビビる。
本人は携帯に夢中だったらしく、手元にはライトグリーンの携帯。似合うな。じゃなくて。
たぶん、まっつんの話しも聞いてなかったんだろうなあ。
周り見回してるし。
「…望月、彼はそう思ってなさそうだけど」
首をかしげつつ蒼司が少し笑う。
この二人のよくわからない攻防を、左右に首を動かして見てる縦一列の三人。もちろん俺と多貴と瀬戸だ。
「突然振られたから驚いたんだよね?」
そう言って微笑む伊織の背後には、黒いなにかが見えてしまった。そんな黒さが似合います。
そんな伊織に若干怯え気味の森くんはから笑いをひとつ。
「え、あ、ハイ。ちょっ、と携帯に集中してて、びっくりしたっス…」
「ね?」
いやいや語尾カタコトだったよ。
ハッハッハッとか笑ってるけどカタコトだったよ森くん。
怪訝な顔の蒼司だったが、諦めたように息を吐いた。
「ふう、ん……そっか」
疑いながらもそこから離れていく蒼司を見ていると、他の生徒に誘われているようで、一気に囲まれて見えなくなった。
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