ズボラ教師。‐01
「───あ、サボり魔が帰ってきた」
「……は?」
瀬戸がだるい心と身体を引き摺りながら教室へ戻れば、それに気付いた仁科諒が声をあげる。
体ごと横を向いていて、瀬戸が使っている机に肘を置いていた。席についた瀬戸を見ながらも、肘をどかす気はないらしい。
今でも、瀬戸和史という人間に声をかけてくる生徒は皆無に近い。教師ですらも最低限声をかけないというのに、前の席とその周りからは当たり前に声がかかる。
「なんだよ。俺の顔なんかついてる?」
「……いや、なんも」
ハッとして目をそらせば、「へんなの」と少しの笑い声と共に聞こえてくる。
しかし諒のその横と前の席の幼馴染み、まったく笑わない(退屈そうに頬杖をついているが目が鋭い)北条多貴と、微笑んでいる(それが逆に恐い)望月伊織がいた。
チャイムが鳴って、屋上から教室へ戻るまでに脳内で答えが弾き出された瀬戸は、一番の強敵はこの二人だな、と心中で溜め息を吐いたのだった。
三限目の授業をサボって休み時間に戻ってきた瀬戸は、俺の後ろ(多貴)と横(伊織)に目をやってから、何故か溜め息を吐いた。
…なんかあったのか、こいつ。
人の顔はガン見するし、わけわからん。
チャイムが鳴って、ざわめきがおさまってくるの耳にしつつ、四限目を思い出す。
「数学かー」
「まっつんかー」
適当なぼやきに返してくれた多貴は、いつの間にか薄い箱を開けながらニヤニヤしてやがる。なんぞ。
いや、ちょ、まて、そのピンクの箱!!
「限定のつぶつぶ苺だと…!?」
「見つけたんだよねぇ、ハイ」
所々赤色のあるピンクを纏ったポッキーを銜えながら、多貴が箱を傾けて出してくれる。
うん、食うよね!
「あざーす。 つかコレ昨日見なかった…」
摘まんだポッキーをふらふらさせながら聞くと、多貴は「あぁ…」と小さくもらして。
「いつも行ってる所じゃない別のコンビニ限定らしくてさ」
「ま じ で か!」
[*][#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!