06
「───別に、俺は挨拶を強制してるわけじゃないんだが、昔から生徒会は学校にいる生徒の頂点のような扱いだったらしい。学校内行事や取り締まり、最重要事項以外は俺達生徒会中心にやり繰りしてるわけだ」
「はあ、」
結局そこか、と蒼司は思った。
理事長は外側、生徒会は学校内というわけか。
そりゃあ生徒には任せられないものは当たり前に存在するし、学校行事を任せる事に関しては責任感の向上にもなる。
しかし違和感は拭えなかった。
生徒が生徒を崇拝する、という違和感も一理あるが。憧れならまだいい。親衛隊とか訳の分からない連中が居て、崇拝とかどこの宗教団体だここは。
副会長が淹れた紅茶は香りも良くとても美味しかった。
しかし頂けない。ここの仕組みが。こんな場所で諒が生活しているなんて。しかも二年目となれば…。
諒は自分の事になると如何せん鈍感過ぎて危ない所がある。大丈夫だろうか。
蒼司はそこを心配していた。
ただただ元恋人の心配だけである。
仁科諒という男は、まるで自分の容姿と性格を自覚していないのだ、と蒼司は語る。
人を引き付け、興味を抱かせる。
見た目が良いのもあるが、時折見せる妖艶さがまたたまらなく愛おしくて───
「……聞いてるのか?」
ふ、と生徒会会長の声で現実に引き戻されてしまい、蒼司は小さく舌打ちをしてしまった。
あ、と思った時には遅く、目を見開いた会長と副会長が蒼司をがっつりと見ていた。
「あぁ、聞いてませんでした。…失礼、もう一度」
「───ふ…っ!」
「?」
突然笑い出した二人に、怪訝そうな顔をした蒼司が、「なんですか」と聞けば。
「いや、…っこんな生徒は初めてで…!」
「……はあ?」
葵が口元を押さえながらも言った言葉に、何を言っているんだ、馬鹿なのか?と蒼司は失礼極まりない事を思いながらも口にはせず、ただ意味の分からない顔をする。
「俺達生徒会の噂は聞いているだろう。宗教みたいに崇拝するヤツがいるとか…っ、…大抵、俺達とこうして会話することすらまともに出来ねぇヤツばっかで…くっ……お前、気に入った!」
「………はぁあ?」
生徒会長の言葉に、蒼司はただただ意味が理解出来ないのと、最後の言葉に嫌悪感を強めただけであった。
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