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05
 


 そして同時に、嫌悪感を抱いた。
 向こう側からはこちらがはっきりとはいかずある程度見えているであろう、と思い、蒼司はあからさまに嫌な顔をした。



「……、転入学後すぐ、こちらに伺わなければならなかった所、今日までご挨拶もせず…」



 まるで会社の取引先に居るような気分だ、と蒼司は思っていた。と、同時にわざとそういう言い方をしてやろうとそれを実行したのだった。

 しかし頭は下げなかった。
 ここはそんな会社ではなく、学校。いくら上級生とはいえ、生徒会とはいえ、しかしそこまでしたくないのが本音だが。



「いや…こちらこそ、すまなかったな」



 返ってきたのは、意外な答えだった。
 こういう立場の人間は、どんな年齢であれ他人の上に立つことが当たり前として生きてきた、という偏見があったからだ。

 それに───。蒼司はやっとはっきり見えた生徒会会長の外見に、若干眉間に皺を寄せてしまった。
 まるで、生徒会会長は漫画や小説に出てくるような傲慢で自分勝手で俺様キャラ的な、けれど容姿は完璧、みたいな見た目だったのだ。
 明るめの所々跳ねた長めの金髪に両耳にひとつずつのピアスに気崩された制服、緩いネクタイ。
 立ち上がりこちらに歩いて来たお陰で全体を見れたが、スラリと長い足に服の上からでは解りづらいが、多分細身でも筋肉はそれなりについているであろう長身な姿。

 華奢な副会長が女子生徒に見えなくもない。顔が中性的だからだろう。



 会長はデスクのある場所、蒼司の真っ正面から見て左側の応接場のようなテーブルとソファーの置かれた場所で立ち止まった。



「葵、紅茶」
「はいはい。霧島君は、紅茶平気かな?」
「……ぁ、いえ、お構いなく」
「飲んでいったらどうだ。話もある」


 断ったもののあっさり切り替えされ、副会長はまるで秘書のようだ、と思ってしまった。


 左側の奥に簡易キッチンルームでもあるのだろう、葵は静かに奥へ消えてしまい、沈黙になる。
 しかしそれはすぐに消えた。


「座ったらどうだ、霧島蒼司」
「……はあ、」


 何なんだ、この高校は。

 それが蒼司の、南ヶ丘高校生徒会への強烈な印象であった。


 


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あきゅろす。
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