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03
 

 「ところで」と声がして、葵の横を見つめていた蒼司は葵に視線を向けた。
 そこには、若干驚くくらいはっきりと黒い影が見える程に奇麗な笑顔の副会長がいた。



「転入生は原則、転入三日以内に生徒会に挨拶をするように決められているのだけれど、今転入してどれくらいかな?」
「……原則…?」



 なんだその原則は。この高校は生徒会が中心なのだろうか。と蒼司は嫌な予感を抱きながらも、自分がここに入学した日を思い出す。



「大体一週間くらいですね」
「あれ、おかしいな。教師に聞いていなかったのかな?」
「はい、特に何も…」



 本当は何かしら言っていたのかもしれないが、蒼司としてはこの高校に諒がいる事が最重要事項だった為、実際教師の話は半分も聞いていなかったのだった。
 しかしそれをくそ真面目に答えれば、今のこの副会長は何をするか分からないので、とりあえず当時説明担当だった教師に責任を押し付ける事にした。
 顔に似合わずあくどい青少年である。



「そっか、それは仕方ないね。使えねぇなアイツ。…じゃあ今日の授業は免除にしてもらうから、今から生徒会室へ来てくれないかな?」
「……今から、ですか」



 一部の黒い言葉は聞かなかったフリをして、蒼司は一瞬悩むが、逆らったら面倒そうな目の前の副会長を見て諦めを悟り頷いた。頷くしかなかった。

 蒼司の答えに、葵が満足げに微笑むと、「ついて来て」と言い踵を返して階段を上がっていく。
 蒼司は一瞬このまま教室に走ってみようか、と考えるが、確実に捕まるという答えを弾き出し、四階へと続く階段を上がって行く。



 四階にある生徒会室は三棟にあり、二棟との廊下の中央辺りに立派な扉がある。
 生徒会室は三棟全てが使われた、無駄に豪華な造りなのだ。
 普段一般生徒は近寄れない場所な為、休み時間でも人気はまるでないらしい。
 その理由は、生徒会役員にあった。


 生徒会長も、蒼司の前を歩く副会長も、生徒会で紅一点の書記も、会計も全員が容姿端麗で頭脳明晰、文武両道。
 そのため憧れ等を抱く生徒は全校生徒の九割にも上るというのだ。
 教師の話を聞く限りで、昭和の創立当時から生徒会は容姿端麗で頭脳明晰、文武両道な生徒が自然に代々決まるのだとか。
 ある意味伝説である。


 


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あきゅろす。
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