02
「諒は平気なの?」
「まあ、思ってたより」
まさか伊織とこんな話をするとは夢にすら出なかった。
そもそも幼馴染み二人が付き合っているにも関わらず、性的な話題は一度も出なかったのが不思議だ。
デリケートな事だから俺も聞こうとは思っていなかったし、二人がそういう事をしているイメージすらなかったかもしれない。初々しさよりも既に出来上がっている感じが強かったからだろうか。
それに自分自身がその当事者になるとも思わなかったわけで。
何しろ甘味愛が強かったものだから、興味がそこに向かなかったのである。そりゃ性に興味が出てきた同級生と話が合わないわけだ。
「じゃあ瀬戸くんがちゃんと気遣ってくれたんだね」
良かった、と呟いた伊織の雰囲気が丸ごと安堵を表すものだから、いずれはこうなるのだと予想されていたみたいで何だか恥ずかしい。
「……伊織はどうだったの」
「僕もわりと平気だったよ」
「さすが多貴」
「ふふ、まあ、翌日が休みだったのもあってね」
「なるほど」
いつの間にか一線を越えていた事にまったく気が付かなかった。
いや、そういえば雰囲気に違和感を抱いた瞬間があったような、無かったような。
「それってさ、1年の夏休みくらい?」
何となく聞いてみたら、こちらを向いた伊織が少しだけ驚いていて自分でも何故か驚きが伝染した。
「やっぱり分かった?」
「ちょっとだけ変だったのは覚えてるけど、そこまでは察しなかったなー」
「数日会わなかったからね、多貴がそわそわするから」
「分かりやすいもんな」
「ごめんね、ちょっと恥ずかしかったから内緒にしてた」
「いや、そりゃそうだろ」
いくら幼馴染みとはいえ、大っぴらに話せる事じゃない。
知らないことのひとつやふたつ親しくとも当たり前にあるもので、必ずしも事情を教える必要はないのだ。
察してくる時は別として。
聞いても大丈夫だと思ったから察したことを伝えてくれたわけだし、兄弟のように育ってもその相手と話した事のない内容の会話が出来て嬉しい気持ちもあったりする。
「なんかちょっと、楽しいな」
「ね、こういう話は初めてだから」
絡んでいる多貴も絡まれている瀬戸も同じような話をしているのだろうか、と二人の背中を眺めつつ、ちょっと笑った。
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