[携帯モード] [URL送信]
12
 


 バイクで家までは10分も掛からず、その間は初めて乗せてもらった時には無かったトキメキとか爽快感を味わった。
 玄関横にある駐車スペースにバイクを停めてもらい、半日程度しか経っていないのに久しぶりに帰ってきたような不思議な感覚で玄関の鍵を開けた。

 随分と濃い一日だったように思う。
 感情の変化が中々に忙しかったけど、結局は普段より強い愛情が引っ付いて落ち着いている。
 自分の中で今の気持ちの深みがこれ以上あるのかと思っていたのに、あっさり越えて更に濃く重い色になった気がした。


 寝るにはまだ早い時間だったので、浴槽に湯を張ってのんびり浸かろうという話になると、瀬戸は「自分がやる」と言って返事も聞かずさっさと浴室に行ってしまった。
 頻繁に泊まっているのもあってかココが自分の家みたいに手慣れてきていて、なんだか照れ臭いというかむずむずするというか。
 着替えもタオルも準備してくれて、腰の具合を気にしているのが良く分かる。

 痛いっつっても日常生活に問題はないんだけどな。

 明日は学校終わったらバイトもあるし、休める時に休むのはアリなので受け入れているが、何だかんだいつも瀬戸に甘えてしまう。
 尽くすイケメンは侮れない。
 瀬戸も甘えてくれるけど、倍にして俺を甘やかすのだからどうやって返そうか悩む所である。

 お湯が溜まるのは案外早いので、その間は風呂上がりに飲む紅茶の準備だけしておくことにした。




 当たり前のように二人で風呂に入ってゆっくり湯に浸かり、違和感は残るものの腰の怠さは和らいだと思う。



「体の具合は?」
「大丈夫ー。紅茶飲も」



 濡れた髪をタオルで撫でられつつもヤカンで湯を沸かし、沸騰したら止めて少し熱を取るまではその場で大人しく髪を拭いて貰った。

 ポットに湯を注ぐと紅茶の香りに包まれる。赤茶色に染まっていく液体の中で揺れる茶葉を見るのが好きだ。



「ほい」
「ん、サンキュ」
「飲んだら寝よ」



 温かい紅茶で体内もぬくい。
 よく眠れそうだ。

 飲み終えたら髪を乾かして、自室のベッドに身を投げたら端まで転がされた。
 羽毛布団に毛布を掛ける隣のイケメンを観察しつつ、寝転がってこちらを向いたら待ってましたとばかりに抱き着く。
 この抱き心地と包まれる感覚の両方で贅沢な気分になりながら、それに身を任せて目を閉じた。



 


[*][#]

32/70ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!