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分かっていても‐01
 


 二人だけで誕生日のお祝いをした翌日は日曜なので、昨日引きこもりしていた分今日は出掛けようかという話になって、お出掛け日和の外へと繰り出しております。


 これといって用はないけど、駅前の商店街をふらつきながら気になった店に入ったり食べ歩きしたりしようか、なんて行き当たりばったりデートは案外楽しかったりするのだ。
 正直瀬戸と一緒ならどこに行っても楽しくなってる気がするけど。


 日曜の駅前はいつもより人が多くて、学生もちらほら見かける。
 長身で目付き悪い瀬戸だけど、なんせ美形なので擦れ違う人達の視線を集める集める。
 今のところ認知度の高い瀬戸が不良に喧嘩を売られる事はなく、真っ昼間から堂々と喧嘩吹っ掛けてくるような輩はとりあえずはいないらしい。
 落ち着いてデート出来るからずっと来なくていい。



「あ、たい焼き」
「新しく出来たんだな」



 駅前商店街は普段あまり奥まで行かないからか、たまに来ると新しい店が出来ている。
 小さめの店舗の前には、薄皮たい焼きの幟(のぼり)があって、ベンチも設置されていた。

 新店舗だからお客さんが多く、周りにも人だかりが出来ている。



「すげー並んでる。落ち着いてからにしよっかな」
「あっちの人形焼きは?」
「それにする!」



 斜め向かい側の人形焼きの店は、よく見る市販の人形焼き以外にたい焼き屋のように焼き立てを一個から買える。
 しかも焼き立て人形焼きは箱詰めされているものの約三倍くらい大きい。

 王道のつぶ餡、こし餡、カスタードの他にチョコクリームや季節ものの抹茶クリームと桜あんが出ていた。
 期間限定に弱い俺としては季節もの二種類が欲しいところ。



「お前は限定のやつだろ」
「よくお分かりで」
「どっち?」
「んー…迷うんだよなぁ」



 抹茶クリームも桜あんもどちらも美味しそうだしなぁ…どっちも買うってのも有りかも、なんてぶつぶつ言っていたら、「だと思った」と横から聞こえてきて、瀬戸がさっさと注文口に行ってしまった。



「うぉーい」
「ん」
「はやい」



 振り返った瀬戸の手には二つの袋があって、差し出されたそれを咄嗟に受け取ってしまった。



「いや払うよ」
「いらね」
「えー…、ありがと」
「ん。半分くれ」



 


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