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09
 



 出来上がった昼食をダイニングテーブルに並べ、暖かいお茶を入れた。


 瀬戸は見た目が洋食好きそうなんだけど、食べたいモノを聞いた時に出てくるのは和食の方が多い。
 これもお祖母ちゃんと一緒に過ごしていた影響なんだと瀬戸は言うけれど、本人はそれで良かったと思っているようだ。

 今の瀬戸が居るのもお祖母ちゃんが親代わりとして育ててくれていたからだと考えると、出会えた事に関しては不謹慎ながら過去があってこそなんだろう。
 お互い正反対な家庭環境だったのに不思議だなぁ、とたまに思う。

 過去の話をしてきて改めて瀬戸を観察すると、姿勢とか箸の持ち方や食べ方等など感心する程綺麗なのだ。
 本人の意識もあったにしろ教えたのはお祖母ちゃんなわけだし、不良みたいな見た目と言動の中身は真面目くんである。
 人間良いところばかりではないけれど、節々からそれらを見つけるとやっぱり瀬戸の魅力はまだまだ沢山あって、新しい魅力を見つけるのもまた楽しい。



「味噌汁旨いな」
「良かったー。具だくさん過ぎたかなと思ってたけど」
「そんなことねぇよ。懐かしい感じする」



 味噌汁には大根と玉ねぎとお揚げ、葱も入っていて野菜が多いものの、懐かしいと思ってくれて、もう本当にイケメン。好き。
 ほどよく脂ののった鯖の焼き加減が更にもう、何をするにもこいつは本当に俺を落とし続けている。




 主役であるケーキは食後少しの休憩を挟んでからテーブルに出した。
 1と8の蝋燭を刺してマッチで火を点けると、午後だから明るいものの揺れる火を見た瀬戸が「気恥ずかしい」と少し笑う。



「いくつになっても俺はやるからなー」
「やったことねぇ」



 揺らぐ蝋燭の火をじっと眺めながら言われて、唐突に抱きついた。



「……ばあちゃんは祝ってくれたけど、あんま外出られなかったからな。夕飯が豪華になったり、手作りで甘いもん作ってくれたり、ケーキとかは自分で買いに行ってた」



 それで充分だったから気にした事は無かった、と瀬戸は言うけれど、別の話を聞く度にどうしようもなく触れたい衝動に駆られてしまう。



「これからは俺が毎年祝う」



 父さんも母さんも夏樹さんも、伊織も多貴も幸丸も桜井ちゃんも蒼司だって馨先輩だって、いま瀬戸と関わってる皆が祝うよ。

 そう言うと、「大袈裟」だと瀬戸は笑う。抱き締め返してくれて顔は見えなかったけど、その力は普段よりも強かった。



 


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