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08
 


 話している間にクリームが出来上がったので、スポンジを三枚に切り分けてホイップを広げ果物を散りばめる。
 それを二回やって挟み、上部から側面にかけて真っ白に塗っていく。
 ホールケーキを造るのは始めてで覚束ないけれど、商品ではないからそんなに気を使う必要はない。

 バイト中にケーキ造りを観察しているので、自分なりに勉強も兼ねて瀬戸の誕生日にケーキを造ろうと考えていた。
 売り物のように材料に凝らず単純なものなら手に入りやすいし、分りやすいレシピが出回っているので何とかなったけど。

 沢山勉強して、学んで、もっと上手く個性的なオリジナルスイーツを作ってみたい。
 知識を得たらどんな創作イメージを抱くのだろう。


 葉を取った苺や大きく切った他の果物も乗せて、周りにホイップを絞ると市販のケーキみたいに飾られていて見てるだけでも楽しい。
 作ってみるともっと楽しい。



「できたー…」
「すげぇ」
「名前入りのチョコはないけど、数字の蝋燭は買ってきた」
「充分だろ」



 袋から取り出した18の数字の蝋燭を真ん中あたりに刺してみれば、それだけで誕生日ケーキらしさが増す。
 大きさは5号くらいだけどちょうど良かったかも。



「とりあえず冷蔵庫行きで、昼飯作ろ」
「それは手伝う」
「誕生日なのに?」
「ケーキ造ってくれたろ。昼飯は一緒に作る」
「かーわーいーい」
「何でだよ」



 カウンターからキッチンに回り込んできた瀬戸に抱きつくと、当然のように抱き締め返してくれて本当にキュンとくる。
 こいつは俺をときめかせる天才だな。



「なに食べたい?」
「魚食いてぇ」
「鯖ならある」
「焼く」
「おーう」



 冷蔵庫から鯖の切り身を取り出すのを見てから、使い終わったボウルなどを洗おうと流しに立つ。

 昼飯は瀬戸が焼いてくれた鯖と卵焼き、白米と作っておいた味噌汁に市販の漬け物という和食になりました。
 最近バイトで卵を扱う頻度が増えたからか、殻をすんなり片手で割ってて惚れました。



「すげー。俺片手で割れねえわ」
「手ぇちいせーもんな」
「小さい言うな。関係あんの?」
「可愛いからいいだろ」
「いやそれはよろしくないぞ」
「可愛い」
「お前がデカ過ぎるだけ!」
「まあそうだろうな」
「くっそ、八頭身め!」
「言葉は誉めてんのに言い方が貶してるのは何なんだよ」



 

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