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06
 



「───そういや、お前の誕生日っていつ?」
「んえ? 4月の21」



 バーステーケーキの生地を焼いている間に仕込む果物を切っていたら、カウンターに肘をついて見ていた瀬戸が手元に視線を落としながら言った。

 4月といえば瀬戸と初対面を果たした月でもあり、関わり始めたばかりで仲良しではなかった時である。

 その間に誕生日を迎えていたし瀬戸の誕生日を聞いたのも最近だったから、そういや知らないんだったなぁとぼんやり考えた。



「来月かよ」
「去年は出会ったばっかりだったし」
「あー…、1年経つのか」



 色々濃い事があったし、距離が近付くのも早かったから随分経っているように思えたけど案外そんなこともなくて、互いに知らないことも多い。



「自己紹介でもする?」
「急だな」



 軽く笑いながら言ったからか、それにつられて瀬戸も笑う。
 今さら自己紹介するのも面白いかなと思って、と言うと瀬戸は「確かにな」と共感してくれた。

 ケーキの間に挟む用に細かい方と飾り用に大きくスライスした苺、キウイ、オレンジが器に揃って、ホイップクリームを作るための材料を冷蔵庫から引っ張り出す。


 生地が焼けて冷める頃には準備が終わっている、を目安にボウルに入れた材料を混ぜながら作業を見る瀬戸を一瞥した。



「とりあえず誕生日は分かったからー…、血液型?」
「O型」
「あー納得ー。俺AB型」
「…そうか? お前はABっぽい」
「よく言われる。星座は牡牛」
「魚座。 お前嫌いな食い物あんの?」
「そこは好きな物じゃないの」
「甘いもん」
「正解。 嫌いな食べ物かー…刺激強いのは苦手かな。辛いのとか」
「そういや食わねーな」
「瀬戸は好き嫌いあるの?」
「納豆は無理」
「ねばねば?」
「いや、ニオイ。オクラとかは食える」
「そんなするかなぁ」
「嫌いだと敏感になる」
「なるほど。 好きな映画は?」
「恋愛系以外なら」
「あー、俺はミステリーとか…ホラー系好きだな」
「どんな?」
「派手に驚かせるよりはじわじわ攻められてる感じのやつ」
「お前焦らされてぇのか」
「俺がマゾみたいな言い方しないの」
「お前が言ったんだろ」
「俺か」



 そこでオーブンが焼き上がりを知らせてくれたので、混ぜるのを止めて生地を冷ます為に取り出した。
 程よい焼き色が美味しそう。



 


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