05
「似合って良かった」
「……ありがとな」
両頬を包まれて優しく触れるキスは、ほんのり紅茶の味がした。
日付は変わっているけど明日は朝から昼にかけてケーキ作りに励むので、電気を消してベッドに転がる。
抱き枕のように包み込まれて温もりに安堵しつつ、額に落とされる唇に少し笑った。
「なに笑ってんだ」
「んー、幸せだなーって」
「……あ、そ」
素っ気ない返事に羞恥が滲んで、カッコいいクセに可愛くて眠気覚めるくらいキュンとする。
日に日に互いの甘さが増している気がした。
どこまで甘くなるんだろう。
そうなっても何も困らないし寧ろ嬉しいけど、そのうちドロドロに溶けて溢れて周りに甘ったるいとか言われそうだ、なんて可笑しく思った。
*
零時過ぎに寝たにも関わらず朝の寝覚めは良かった。
普段は眠気が残ってるのに今日はぱっちりと覚めて、相変わらず抱き枕にされたまま至近距離で寝顔を眺める。
眺めて少しすると胸板に顔をくっ付けたくなって、それを実行したら瀬戸が起きる、というのが朝の恒例のようになってきてる気がする。
「……はよ」
「んー…、おはよ」
毎日一緒に居ると飽きるとか、適度な距離があった方が冷めにくいとか色々聞くけれど、今のところそういった感覚はない。
あっさりしてる時は互いにあっさりで、くっ付きたい時は互いにべったりで、感覚が似ているのかもしれないなぁ、と何となく考えた。
付き合って半年も経ってないが、雰囲気が甘いとは言われるけど落ち着いているとも言われる。
性格が似ているわけではない。
価値観も違う。
それでも好きなところが沢山あるのだから、その気持ちが大切なのだとも思う。
「まだ眠る?」
「いや…、起きる」
起きると言いながら密着度が上がって、頭に擦り寄る感覚に笑う。
瀬戸が一番可愛い時は寝起きである。
普段よりも更に言葉数少なくなるけど、行動がそれに代わってはっきり示してくる。
とりあえず、甘え方が可愛い。
自分が瀬戸にとって甘えられる相手である事が嬉しい。
「んふふ、かわいい」
「…お前最近そればっか言ってねえ?」
「普段は格好いい。これは可愛い。好き」
「……はー…」
朝から恥ずかしい、と小さく呟いた声が照れを含んでいたから、とりあえず強く抱き締めた。
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