03
登校する生徒は通らない場所なのに、何故か下に続く階段から上がってきた瀬戸の姿を視界に捉えた。
眉間にはがっつり皺。
かなり不機嫌そうに見えた。
まさか聞こえたとか…?
また恋人になって、って蒼司の声を聞いちゃったとかじゃねぇよな…?
そう思った瞬間、何故か罪悪感を抱いた。なんかこう、鳩尾の辺りがギュッて。
…意味分かんねぇ。
「……諒の新しいお友達かな?悪いけど大切な話をしているんだ」
「へえ、そら悪かったな」
誠意ゼロだなオイ。
「つか、お前何でそっから?」
「は?俺はいつもこっからだけど」
「……へぇ」
遭遇率低い所からってか。
意外と人気高いらしいからな瀬戸は。
階段を上りきって、横で止まった瀬戸はまだ不機嫌そうに眉をひそめてる。
「SHR始まんぞ」
「あ、…ぇ、うわっ」
忘れてた、と思った瞬間に、瀬戸にいきなり腕を掴まれ引っ張られ。
思わず足を引っ掛けそうになったものの持ち直し、蒼司に目もくれず俺の腕を掴んだまま歩きだしたものだから、ついて歩きだすしかなく。
ぱっと振り向けば、淋しそうな顔をした蒼司が動く事なくそこに立ってた。
「…っんだよ、どうしたんだよ」
「べつに」
はい? 兄やん、言葉のキャッチボールしようぜ?
「腕、痛ぇんだけど」
「……っ、わりぃ」
いいけどさ。
教室前でぱっと手が離れ、自由になる。どうしたんだコイツは。
疑問を抱きつつも一緒に教室に入れば、物珍しさからかクラスメートの視界がヤバかった。
「なして瀬戸ちんと?」
「……なんだその呼び方」
「たまたまソコで出会っちゃった」
「霧島君は?」
上から、多貴、瀬戸、俺、伊織。
瀬戸のツッコミはスルーで。馴染むと多貴は『ちん』って呼ぶ。何故かは知らん。
「いや、瀬戸に引っ張られて来たから蒼司は知らねぇ」
「……へぇ」
「……そう」
言えば、多貴と伊織が目を合わせて笑った。なぜ。
つか蒼司と話途中だったんだが。いいのか?……いいか。
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