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06
 


 幼馴染みで近過ぎたからこそ気が付かないって事があるのを身近でよく知っている。やっぱりそれは男同士だからなのかもしれないとも思う。
 同性だと分かっていても互いに好きだという気持ちを嘘にしていないから、自分の気持ちと真摯に向き合って出た答えが今なんだろう。伊織と多貴もそうだった。

 先輩たちの選択は他人から見れば寂しいけれど、お互いにとっては最善だったんだ。翔先輩は「待つ側の身にもなれ」とか一言もないし、その空気すらも見せない。



「……それ、慧先輩が買ってました」



 言いながら翔先輩が身に付けているアクセサリーを指すと、先輩はブレスレットの付いた手首を眺めてからピアスに触れた。



「部屋にあった」
「メモとかは無かったんです?」
「無かったな」



 でも置いたのが慧先輩だとすぐに分かったのは、部屋の荷物が無くなった事と中身が入っていた箱の雰囲気だったらしい。
 それで察するって凄いな。



「置き土産とか冗談で置いたっつったらアイツぶん殴る」
「あー…」



 置き土産にするんだー、なんて笑っていた慧先輩を思い出して、あの人はふざけているのか真剣なのか分からないから困るなと先輩の手首に巻き付くブレスレット見て苦笑した。

 付き合いが長いという事に加えて好きな人に贈るものだから、慧先輩のセンスは抜群でどちらも良く似合っている。
 選んでいた時は選ぶというより目についた物を取っただけで悩む素振りも見えなかったのに、その直感が慧先輩らしいとも思う。



 ───気付けば店内は賑わいが増していて、瀬戸の仕事姿を見ていると女性客は話しかけたりはしてないが目で追っていたりと密かに人気だ。
 無愛想ではないし控えめながら笑顔もあるけど、雰囲気や見た目が尖ってるから気安く話し掛けるのは難しいのかな。泉さんも似たような感じだし。
 唯一雰囲気の柔らかい睦月さんはひたすら料理を作っていて、時折睦月さんに向けて「可愛い」という女性客たちの声が聞こえた。



「みなさん人気ですね」
「いいんじゃねーの。持ち腐れにしなきゃ損はねぇしな」



 カップを手に軽く笑った先輩は、なるほど使い方というのを良く分かっているようだった。

 その後も翔先輩は瀬戸の上がり時間まで付き合ってくれて、もう本当に良い人でしかない。瀬戸を待つ間にlineのIDを交換しました。



 

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