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05
 



 ───あー、カッコいいなあ。

 慧先輩の件について話は早々に終わり、睦月さんが出してくれた試作ケーキに目を輝かせていた時、暖簾の向こうから出てきた恋人に見惚れた。

 白のYシャツなんて制服で見慣れているはずなのに、第1釦のない七分シャツから覗く首筋と袖から出る腕が堪らなく好きだ。黒い腰エプロンに、邪魔だからと上げた前髪。ピアスを外した耳朶は初めて見たかも。とにかく。



「好き」
「お前見境ねーな」



 カウンターの横に立ったその姿に思わず漏らすと、瀬戸は苦笑を浮かべた。
 惚れ直した、なんて言いながらも焼き付けるように見つめていると、睦月さんが愉しげに笑う。



「諒くんって思った事がっつり言っちゃうタイプなんだね」
「いや…コイツ空気読めるタイプなんすけど、たまにぶっ飛びます」
「いーじゃん。言われる側としては分かりやすくてさ」
「分かりやすい以前に恥ずかしいんですけど」
「照れちゃってー、本当君らかわいいね」



 睦月さんとの会話を聞きながらも目線はずっと瀬戸ばかりで、新鮮なその姿から目を逸らすのが勿体ない。



「お前ら付き合ってんだな」
「え、翔ちゃん今さらそれ言う?」



 ずっとぼんやりしていた翔ちゃん先輩が、片手頬杖のままぽつりと言った言葉に睦月さんがすかさず突っ込みを入れた。
 翔ちゃん先輩は慧先輩について頭が一杯だったわけだし仕方ないなと俺は思っていたので、しっかり肯定すると先輩は暫く睦月さんや泉さんを見てから明後日の方向に目を向ける。



「……類は友を呼ぶか…」



 溜め息と共に吐き出された言葉に首をかしげたが、睦月さんは理解しているのか「翔ちゃん悟ったね」と真顔で言った。




 夕方になるとお客さんが次々に来店し、忙しなく動く瀬戸の仕事している姿をじっくりと観察しつつも、意外と社交的な翔ちゃん先輩と色々な話をした。



「そういえば、翔ちゃん先輩はいつから慧先輩の事好きなんです?」
「ちゃんはいらねー。 いつからってのは覚えてねぇけど、結構前だろうな」



 幼馴染みとしてずっと一緒に居たから余計曖昧らしく、見る目が変わっている事に気が付いたのは中学辺りだった気がする、と先輩はすんなり答えてくれる。
 好きである事を恥かしいと思わないから堂々と言えるのかもしれない。かっこよすぎか。


 

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あきゅろす。
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