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02
 


 目的地へと歩きながら翔ちゃん先輩に「どこに行くのか」尋ねられ、瀬戸のバイト先だと答えると先輩は瀬戸に憐れみの目を向ける。
 それに気が付いた本人は大丈夫だと言葉で返しているが、目的地である喫茶店が見えた途端に翔ちゃん先輩が僅かな驚きを見せた。



「……ここかよ」
「え、知ってるんですか?」
「……まあ、」



 世間は狭い、なんて考えていたら翔ちゃん先輩が先に喫茶店の扉を開いていて、慣れた様子な背中を見てよく来ているのかなーと意外に思う。
 小さな鈴の音を聞きながら先輩に続いて中に入ると、カウンターの向こうには睦月さんがいた。



「いらっしゃ……え、翔太郎この時間珍し…ってか、え、せっちゃん早い。しかも諒くんまで」



 店内にお客さんはあまり居なくて、テーブル席に年配のお客さんが二組だけだった。
 カウンターに座ると睦月さんは俺らを流れるように見て、面白いくらいに戸惑っている。



「こんにちは睦月さん」
「うん、久しぶり……、いやいや何で一緒?知り合いだったの?」



 俺は睦月さんと翔ちゃん先輩が知り合いって事に驚いてるけど、雰囲気的にはかなり親しそう。
 店を知っていた、というよりは此処で働く睦月さんを知っていたからなのかと思っていると、奥の暖簾の向こうから金髪の強面さんが出てきた。



「───…は? なんでアンタ…いやこれどういう状況だよ」
「だよねー、驚くよね泉ちゃん」



 金髪をポニーテールに結った人は泉さんで、睦月さんと同じ一個上の喫茶店従業員である。
 どうやら彼も翔ちゃん先輩と知り合いらしい。世間が狭いな。

 バイトまで時間のある瀬戸はカウンターで頬杖ついて興味無さそうではあるが、泉さんに声を掛けられたのを見て右側に座っている翔ちゃん先輩の方を向いた。



「すみません、やっぱお知り合いばかりの場所では気まずいですかね」
「いや、別にこいつらに聞かれても問題ないから気にすんな」
「ありがとうございます」



 カウンターの向こう側で興味津々な睦月さんは先輩に珈琲を、俺と瀬戸に紅茶を出してくれた。



「ありがとうございます睦月さん」
「いいよー、てか翔ちゃんは諒くんとどこで知り合ったのさ」
「慧の後輩」
「……え、…えっ!?諒くんが!?」



 先輩の言葉に大きく喫驚を表した睦月さんに頷くと、何故か泉さんも驚いていた。



 

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あきゅろす。
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