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待ち伏せ。‐01
 



 桜の色が見え始めた3月。
 期末試験と卒業式と春休みが一気にやってくるが、個人的に一番重要視しているのは瀬戸の誕生日である。
 そういえば年末に慧先輩と食べ放題へ行った時に買ったプレゼントを、小物入れに隠して渡したい欲を抑えていたんだったな、なんてふと思い出した。


 なぜ今思い出したのかと言うと、あの時慧先輩も置き土産だなんて笑えない冗談でアクセサリーを買っていて、そのアクセサリーが視界に入ったからである。
 卒業間近になるんじゃなかったのか。早過ぎやしないか。



「こんにちは」
「……お前、普段そんなんなんだな」
「……その節はどうも」



 そういや初対面の時は女装してましたね。

 授業を終えて瀬戸と一緒に校門を越えた所で、塀に寄り掛かり周囲に近付くなオーラを放つ見覚えのある人を見つけて躊躇いなく声を掛けた。
 驚いた表情の彼は、以前文化祭で慧先輩と一緒に居た翔ちゃん先輩である。
 黒い短髪に黒いジャケット、黒いスキニーパンツ。白いのはジャケットの下に着たタートルネックだけの極めてシンプルな服装だがそれを難なく着こなす安定の高い顔面偏差値。
 耳に光るピアスと手首の革ブレスレットは、あの日先輩が買っていたものだ。


 慧先輩が言っていた「もしかしたら来るかも」という言葉をぼんやりと思い出し、目立つ校門前から離れる為に移動を提案するとすんなり頷いてくれた。

 どこに行こうかと考え始めてすぐに、そういえば瀬戸は今日バイトだよなと隣を見上げる。
 当然のように目が合うと、無言だった瀬戸は俺の考えを察したのか少ししてから軽く眉を潜めた。



「……違う場所にしろ」
「おねがい」



 ポケットに突っ込まれていた手を引き抜いて両手で掴み、反射的に握り返されたが構わずそのまま見つめる。
 怪訝そうな翔ちゃん先輩には申し訳ないが暫く隣のイケメンをひたすらに見つめ続けると、瀬戸は小さくため息を吐いた。



「……分かったよ」
「やった! ありがと」



 思わず勢いで好きと言いそうになって、まあ言っても大丈夫なんだけど翔ちゃん先輩が来た理由を思うと流石に自粛しようと飲み込む。



「お待たせしました」
「……ああ、」



 何を見せられたんだ、という表情な翔ちゃん先輩を促して歩き出した。
 ちなみに掴んでいた手を離そうとしたら離れなくて、そのまま片手が瀬戸のブレザーのポケットに持って行かれました。



 


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