02
「…SHRまでには終わるから」
「そう願いたいね」
朝のSHR前で登校してくる生徒の群れの中、少し前を歩く蒼司に視線が集中。
転入生ってのもあるが、普通にコイツ格好良いからな。
その後ろを歩く俺にも視線。転入生と歩く珍しさか、元恋人って事をこの場で知ってんの俺と蒼司だけだからか、ちょい気まずい。
歩く事数分。立ち止まったのは、人気のない階段。
前を向いていた蒼司が振り返って目が合うと、ただ改めて目線が上を向く身長差を実感しただけで、何を言われるのかって予想はしなかった。
若干見上げる形になって、ただ目を見れば、蒼司は一度目をそらし再度目を合わせて口を開いた。
「…俺は、ずっと諒の事忘れてないよ」
一瞬、言ってる意味が理解出来なかった。
……どういう意味だ?
「引っ越す前日、教室で諒にフラれてからも、諒への気持ちは変わってない」
「……ぅん?」
「俺は今も諒が好きだよ。あの時と変わらない恋愛感情でね」
「!」
───今も好きだよ。
その言葉が、この間聞いた伊織の言葉を思い出させた。
『───また言い寄られないようにね』
……まさか。だって、あれから二年以上だ。それまで北海道にいて連絡すら取ってなかったのに、まだ、好きだって?
「いやいやいや、ジョーダン、」
「じゃないよ。至って本気」
蒼司の目が、マジで真剣なせいで。
見てらんなくなってパッと目をそらした。
「……北海道に行っても誰も好きにならなかったし、諒の事ばっかり考えてた」
「またまた」
「…元々北海道へは親の転勤先で、戻りたいって言ったんだ。高二になって一人である程度出来るようになったから、こっち帰ってきてアパート借りてさ」
「……」
ちらと蒼司を見れば、人懐っこい笑顔じゃなくて、目が優しい笑顔で。この表情は、俺が苦手とする表情だ。
なんか、恥ずかしくなるから。
たぶん今、俺の目は挙動不審だ。
蒼司の動いてる口がスローに見えて、頭の中に声がまともに入ってこないような───
「……諒に逢いたくて帰って来たんだ。また俺と恋人になってく」
「───仁科」
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