02 作る予定の菓子を説明し終わった頃に、会長はやって来た。 「ちゃんと買えました?」 「…小学生のおつかいか。お前は俺がどう見えているんだ」 「え、高校三年生ってのはさっき思い出しましたね」 「……」 品揃え豊富なスーパーの袋を受け取りながら答えると、複雑そうな顔で会長は溜め息を吐き出す。 家の中へ促せば、「失礼する」と言いながら靴を脱いで揃える行動が流れるように自然で、流石は育ちの良さが伺えた。傍若無人でもそこらへんは身についているらしい。残念な美形である。 ちなみに着ていただろう上着も、玄関を開けた時から既に腕に掛かっていた。まったく残念な美形である。 後輩宅なのだから気にしなくて良いのに、しかしすでに癖になっているのかもしれない。 これで傍若無人が無くて愛想が良く愛嬌を振り撒いていたら完璧なのだけど、それはもはや会長ではない。というか気持ち悪い。やっぱり残念な所がある今の五十鈴馨が俺にとっての愉快な生徒会長なのだ。うん。 「……お前今凄く失礼なこと考えていないか」 「会長は会長だなとは思ってた」 「どういう意味だ」 「他意はない」 「本意の話だ」 「完璧だと気持ち悪いなって話?」 「……悪意のない罵りと解釈しても差し支えないか」 「褒めてるからね」 「嫌味でもない辺り質が悪い」 「ありがとう」 「俺は褒めてない」 「あ、そう?残念」 「……」 「お前らいつまでそこに居んだよ…」 「おっと」 立ち話が続き過ぎたようで、瀬戸が呆れてリビングから出てきた。 袋の中を覗きながら戻ろうと足を進めると、後ろから会長の溜め息がまた聞こえた。これから幸せの種を作ろうというのに今から減らしたら効果無くなりそうだ。 とりあえず会長の休憩がてらお茶を入れて、俺はキッチンで中身を確かめるべく袋から材料を取り出す。 カカオ率高めのチョコチップと板チョコ(イチゴチョコも買って来てもらった)、ナッツや小さいドライフルーツ、チョコの型、菓子を入れる包装材料も揃っている。 型は数種類を一度に作れる便利なものだ。 「それで問題ないのか」 「うん。あいつ可愛いの好きだし、こういうキャラクターがいる型で良いと思う」 型にはハート、バラ、リボン、ネコ、肉球があって、女子向けではあるが問題ない。だって蒼司だから。 [*][#] [戻る] |