02
朝のHRの時間に、学校内の教師で一番ズボラだと有名な担任が入ってくる。
頼れる教師で人気なんだけど、ズボラ。
色々と適当で、担当は数学なんだが時々授業中に、怠いからこれくらいでイイか、とかなんとか言い出す人。
…の割に、きっちり必要範囲は教えてるんだからびっくりだよ。
「席戻れー。黙れー。……何だよ今日熱いなキミら」
教卓から生徒を見回す担任、松本誠二(マツモト セイジ)、28歳独身。誠って字が合ってんのか合ってないのか微妙な人。
ちなみにあだ名は「まっつん」だ。
「で、北条はなに、失恋でもしたのか」
多貴(の後ろ姿)が目についたのか、真面目な顔で言えば。
「してねぇしするつもりもない!です!」
「そうか、じゃあ一応こっち見ろ」
「おーいえー」
「……よし、じゃ始めんぞ」
多貴の横向きに突っ込まないのは、一年の時もまっつんが担任で慣れてるからだ。
つうかコイツが真っ正面向いてる時って逆に珍しいんだけどな。
「えー…と、何だっけ、…あぁそうだ」
オイ。忘れんな忘れんな。
「お察しの通り、転入生がうちのクラスに入ってくる事になりました」
「男ですか、女ですか!」
教卓前の席の男子が、ハイっと手を挙げて言う。そんな気になるのか。
「どっちがいい?」
「……えー…っと…」
虐めてるよあの教師。
教師前の男子はその手の男子で、童顔の可愛いタイプの生徒。
まっつん、知ってて聞いてんだろうな。
「まぁ、聞いても変わんないけどな。2Aの男子数が十四なのは知ってるだろうから、言わずとも男子だって気付いてるヤツもいるだろう」
横向きのまま、頬杖をついてまっつんを見る。
面倒臭いから早く終わらせてほしいんだけどなぁ、甘いモン食いたいなぁ。
なんて考えてたら。
教室の前ドアが開いた音がして、何となくそっちを見た時だった。
「……───、ぇ」
その声は、本当に小さくて。
だけど視界の端で、伊織が軽く振り返ったのを見た。
[*][#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!