季節外れの転入生。‐01
前の席なのに、こっちの机の上でうなだれてるイケメンがいる。
「…眠そうだな、多貴」
「んー…、眠いってか、怠い…?」
「五月病?それって多貴みたいな人でもなるものなの?」
「マイハニー…ダーリンに向かってそれは酷くねー?」
「これは失敬、ダーリン」
……ダーリンって言うわりには毎回真顔だよな、伊織。
そんなこんなで五月になりました。早いもんだ。
「どんな人かなぁ」
「やっぱイケメンがいいよねぇ」
「可愛くてもいいかな」
「根暗だったらどうするぅ?」
「えー」
「でもこのクラス、イケメン多いしぃ」
「「ねー」」
……。なんぞや。
「なんで今日こんなキャピキャピしてんの?女子とか」
机を占領されてるから体を横向きに、瀬戸の机に肘を置いて、異様にざわめいてる教室を見る。
「諒、昨日の話聞いてなかったの?」
「誰の」
真顔で聞いたら溜息吐かれた。
だって、記憶にないし。
「転入生が来んだと」
「…瀬戸、お前聞いてたのか」
「上の空だったヤツよりかはな」
「甘いモン食いたくて」
「………」
なんだよその呆れた目は。
瀬戸に呆れられるとムカつくな。
「半端な五月に転入してくるっていう珍しさとかもあるんじゃないのかな」
「……ふうん」
ぶっちゃけあんま興味ねぇ。
「てか、ここのクラスに?」
「らしいよ」
「2Aだけ男子十四人だからじゃねー…?」
「え、」
ダラけてる多貴が、急に会話に乗り込んできたと思えば。
「ここ男子十四なんだ…」
「ほかのクラスは男子十五女子十五で三十人なんだけどさぁ、なんか、クラス決まってから引っ越しも決まっちゃったヤツがいたらしいんだよねぇ…」
「…へぇ」
とりあえず、喋り方も怠いな。
今だ机を占領しつつ、うーだのあーだの唸ってる多貴の様子を見つつ、教室でキャピキャピしてる女子(あと一部の男子)を何となく見回してみる。
……飢えてんのか?
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