11 「なんでお前が泣くんだよ…」 「うるせー…っ、好きだ馬鹿ぁ…ッ」 「意味わかんねぇよ」 呆れたように笑われながら頭を撫でられる。両親が居ることはわかっているのに止められない。 そのまま肩に額を押し付けて、勝手に止まるまで涙を流し続けた。 「おやおや、諒が泣くなんて珍しいね」 「諒ちゃんには申し訳ないけれど可愛くて仕方ないわね」 まあ両親は相変わらずだから気にしなくて良さそうだ。 穏やかに笑う両親の声と、瀬戸の温もりが心地好い。 「和史君、話してくれてありがとう。君はとても優しい子だね、恥だなんてとんでもない」 「いや、大したことない話でしたけど。なんつうか、俺はもう昔の事とか親の事はどうでも良いと思ってるんです」 「というと」 「諒に、正仁さんと怜さんに、今関わっている奴らに出会えたから、寧ろこれで良かったんじゃねぇかなって」 瀬戸の言葉ひとつひとつが、俺を引き摺り込んでいく。 嬉しくて恥ずかしくて愛しい言葉が沢山耳に入ってくる。 「そう言ってくれて嬉しいよ」 「もちろん私たちもあなたと出会えた事が幸福だわ。和史君はもう私たちの息子だもの」 母さんまた言ってる、と思ったが、今はその言葉が嬉しい。 瀬戸は少し笑ったけれど、静かに深く呼吸した事を知る。 「親とか子供とかよく分かんなかったけど、その言葉が今は嬉しいと思います。……ありがとうございます」 少し詰まったような声に、瀬戸の心境を悟った。 ───…ああ、もう、可愛い。 そんな想いが溢れ勢いを止められずに、握っていた手を離してしっかりした体に横から抱き着いた。 突然だったせいか瀬戸は少しバランスを崩したものの、流石に面白いくらいの反射で体を掴まえてくれた。 「っ、あぶね…」 「幸せにしてやるからな…!」 「お前さっきから突然過ぎるんだよ」 「…まったく二人を見ているとこちらが幸せな気持ちになるね」 「そうね、今年も良い年になるわ」 両親の方はまったく見ていないけれど、声からして見つめあっている気がした。 状況を理解してから、やばいとは思わなかったが、血筋だなこれはと改めて認識した。こんな幸せな血筋に一体なんの問題があるのだろう。 [*][#] [戻る] |