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「なんでお前が泣くんだよ…」
「うるせー…っ、好きだ馬鹿ぁ…ッ」
「意味わかんねぇよ」



 呆れたように笑われながら頭を撫でられる。両親が居ることはわかっているのに止められない。
 そのまま肩に額を押し付けて、勝手に止まるまで涙を流し続けた。



「おやおや、諒が泣くなんて珍しいね」
「諒ちゃんには申し訳ないけれど可愛くて仕方ないわね」



 まあ両親は相変わらずだから気にしなくて良さそうだ。
 穏やかに笑う両親の声と、瀬戸の温もりが心地好い。



「和史君、話してくれてありがとう。君はとても優しい子だね、恥だなんてとんでもない」
「いや、大したことない話でしたけど。なんつうか、俺はもう昔の事とか親の事はどうでも良いと思ってるんです」
「というと」
「諒に、正仁さんと怜さんに、今関わっている奴らに出会えたから、寧ろこれで良かったんじゃねぇかなって」



 瀬戸の言葉ひとつひとつが、俺を引き摺り込んでいく。
 嬉しくて恥ずかしくて愛しい言葉が沢山耳に入ってくる。



「そう言ってくれて嬉しいよ」
「もちろん私たちもあなたと出会えた事が幸福だわ。和史君はもう私たちの息子だもの」



 母さんまた言ってる、と思ったが、今はその言葉が嬉しい。
 瀬戸は少し笑ったけれど、静かに深く呼吸した事を知る。



「親とか子供とかよく分かんなかったけど、その言葉が今は嬉しいと思います。……ありがとうございます」



 少し詰まったような声に、瀬戸の心境を悟った。
 ───…ああ、もう、可愛い。

 そんな想いが溢れ勢いを止められずに、握っていた手を離してしっかりした体に横から抱き着いた。
 突然だったせいか瀬戸は少しバランスを崩したものの、流石に面白いくらいの反射で体を掴まえてくれた。



「っ、あぶね…」
「幸せにしてやるからな…!」
「お前さっきから突然過ぎるんだよ」
「…まったく二人を見ているとこちらが幸せな気持ちになるね」
「そうね、今年も良い年になるわ」



 両親の方はまったく見ていないけれど、声からして見つめあっている気がした。

 状況を理解してから、やばいとは思わなかったが、血筋だなこれはと改めて認識した。こんな幸せな血筋に一体なんの問題があるのだろう。



 


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