07
脱衣所から浴室に入ればそこはもう外のようなもので、シャワーなどが扉のすぐ側にあって、奥に浴槽、その向こうはもう雪に覆われた白い山々と快晴の青が見えている。
母さんは一番奥で景色を楽しんでいて鼻歌が聞こえた。
木製の天井はあるが、窓はないので冷たい風が直接当たって冬は寒いがそれ以外は暑すぎず寒すぎずな気温になるんだろうな、とシャワーに当たりながら思う。
それでも、冬のこの寒さでも嫌にならないのが露天風呂の魅力なのかもしれない。
粗方体にお湯を掛けてから、一足先に黄土色の湯に足を沈ませた。
「あついー…」
露天風呂は他の風呂より特に温度が高く感じる。冷たい風が上半身に当たっていて寒いんだか熱いんだか分からない。
ゆっくり体を沈め、小さいタオルを近場の枠に置いておく。
「いや、いい景色だね」
「やっぱり日本のお風呂は気持ち良いわね」
父さんは何時の間に入ったのか既に母さんの隣にいて、瀬戸が隣で体を休ませていた。
浴槽自体そう大きくはないが、六人は余裕で入れるくらいにはある。
全員入ってから母さんが振り返る。
我が親ながら恐ろしいくらいにその見た目は二十代と疑わないほどで、父さんと並ぶとカップルか新婚夫婦で高2の子持ちとは思えない。
いやでも確かまだ三十代後半だったはずだ。たぶん。それでも若いけど。
「二人とも、私たちの我が儘を聞いてくれてありがとうね」
「びっくりはしたけど、実際入ってみるとそんな気にならないもんだな」
瀬戸が俺に同意を表すと、それは良かったと父さんが答えて微笑む。
湯が透明だったらどうだったかなとは思ったが、入ればほとんど見えなくなる黄土色だからこその提案だったのかもしれない。
実際のところ透明だとしても同じことになりそうな気がするけれど。この両親だし。
何をしても結果的に悪くないからこそ強く拒否する事が出来なくなるんだよなあ。
そう考えたら可笑しくて笑みが浮かぶ。
軽く雑談しながら景色を眺めていると、「そうだ」と父さんが瀬戸を見た。
「私は和史君の話を聞きたいのだけれど、どうかな?」
「え、…ここで、ですか」
「ああいや、上がってからで構わないよ」
あまりに自然な振りだったから驚きが後になって訪れたが、戸惑う瀬戸に父さんは続けて声を掛けた。
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